昨年8月、2050年までに二酸化炭素(CO2)の実質排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言した苫小牧市。庁内に関連部署で構成する横断的組織を次々と立ち上げ、体制整備を進めてきた。22年度も大きな事業の一つに環境基本計画の大幅見直しがある。行政だけでなく市民や事業者と一体となって取り組む機運を醸成し、国の脱炭素先行地域の指定実現も掲げる。
苫小牧には、脱炭素の最先端の動きをいち早く受け入れてきた経緯がある。その一つが国による国内初の大規模プロジェクト、CCS(工場などで出るCO2を分離、回収し、地中に圧入、貯留する技術)だ。16年から日本CCS調査が苫小牧沖での実証試験を始め、19年11月に目標の圧入量30万トンを達成。21年度からCCSに有効利用のUを加えたCCUS実証事業に取り組んでいる。
17日の市議会で市政方針演説をした岩倉博文市長は「今後のゼロカーボンの取り組みは産業、暮らし、交通、公共などの幅広い分野で、地域の強みを生かしながら、まちの活性化につなげていくことが重要」と強調した。
昨年8月に関係課長や次長職から成るプロジェクトチームやワーキンググループを発足させ、今年1月には上位組織の位置付けで事業の進行管理を担うゼロカーボン・タスクフォースを新設した。
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環境基本計画は18~27年度が計画期間で、22年度は中間見直しの時期。通常は大きな内容変更を伴わないが、今回は内容の一新を図るため新年度予算案に1570万円を計上した。
21年度中にプロポーザル方式で事業者を選定し、4月から改訂に着手。市環境審議会に諮った上で、12月までに素案を市議会に提出する。パブリックコメント(意見公募)を経て22年度中に策定する方針。
名称も「環境基本計画(ゼロカーボン推進計画)」に改め、温室効果ガス排出量の複数パターンの推計値や削減の目標値を示し、将来ビジョンや脱炭素シナリオも盛り込む。計画期間は政府の目標設定に合わせて30年度に延ばす考えで、環境保全課担当者は「削減目標値はこれまで以上に高い数字になるはず」と語る。
このほか、市の温室効果ガス削減の取り組みをまとめた苫小牧市役所エコオフィスプランも改訂し、公共施設の再生可能エネルギー導入を進める。住宅省エネルギーシステムの普及促進事業や小中学生向けの環境教育副読本作成など、市民の省エネ行動を誘う仕掛けにも知恵を絞る。
市政方針演説の中で岩倉市長は「2030年までの取り組みが鍵を握る。企業および市民一人ひとりと認識を共有し、ゼロカーボンシティを目指したい」と力強く語った。
(樋口葵)
(終わり)