大阪市生まれの構造家・山脇克彦(1968~)は、組織設計事務所所属時に高層建築から中小規模木造建築、文化財耐震補強設計と多様な実績を残した後、2015年に札幌市内にて独立、自身の事務所を立ち上げる。建築における骨組みともいえる構造設計を基盤としながら、風土に根差した木造建築を多彩な架構システムにより実現。緻密なディテール検討を経て構造の具現化を果たすその設計は、緊張感と解放感が同居した“作品”といえる。
胆振管内における仕事としては、「苫小牧信用金庫 まちなか交流館」(設計…北海道日建設計)、「ウポポイ国立民族共生公園 体験交流ホール」などが挙げられる。また、18年に当館で開催した企画展「藤沢レオ―Still Living」に際して、市内在住の彫刻家藤沢レオの屋外展示作品の構造設計を手掛けたことも記憶に新しい。
本展では、山脇がこれまで手掛けてきた建築構造を示す模型などが展示室内において展示されている。一方、当館のラウンジ前の屋外に展示されたオブジェ《風織―KAZE ORI―》は、本展における目玉の一つといえる。日胆地方の「風・波」の波動・流動性に着想を得て制作された本作は、新旧木建材を素材とし、建築の骨組みデザインを応用したものだ。垂木材の角材を少しずつずらすことで扇子をほうふつとさせる曲線構造を有する本作は、見る角度によって異なる表情を見せ、羽ばたく鳥の姿のようにも映る。素材の一部として、北海道胆振東部地震の際に倒壊した家屋の建材が用いられており、そこには復興への願いが託されている。
(苫小牧市美術博物館学芸員 細矢久人)
(終わり)