先日、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターにて、約2年ぶりとなる「野生動物に学ぶ救護セミナー」を開催しました。これは、当センターに搬入される傷病鳥獣たちの現状や救護活動を通じ得た学びを、多くの方々と共有したいという思いで2012年に始まったセミナーで、近年では救護の情報だけではなく、もっと広い視野で大自然やそこに生きる野生動物からの学びを共有できたらと、さまざまな分野で活躍している講師をお招きし、実施してきました。
しかし、新型コロナ感染症拡大に伴い、昨年度のセミナーはすべて中止。今年度も1、2回目のセミナーは中止となりましたが、3回目にしてようやく開催することができました。
今回のセミナーのテーマは「タンチョウ」。これまで、道東やその周辺にしか生息していないイメージがありましたが、空知管内長沼町やむかわ町など、新たな環境で生息が確認されるようになり、美々川流域においても生息していることは、皆さまもメディアなどで見聞きされたことがあるのではないでしょうか。
そこで今回、このタンチョウの生息地保全や保護活動に尽力されている、ネイチャー研究会inむかわの小山内恵子さんと環境省北海道地方環境事務所の若松徹さんを講師としてお迎えしました。
小山内さんからは、むかわ町で2011年から確認されているタンチョウやその家族が、安全に暮らすことができるよう見守り隊を結成したこと、継続的な観察と詳細に情報を開示していくことで、多くの人の目でタンチョウを見守っていることを、そして若松さんからは、タンチョウが絶滅したと思われていた1920年代、釧路湿原で再発見されてから今日に至るまで、地域住民の取り組みから引き継いだ環境省としての保護増殖事業について、そして推定生息羽数約1800羽と順調に生息数を増やしたタンチョウを、今度はいかに生息地を分散させていくかの現状と課題についてお話しいただきました。
第一線で活躍されているお二人の貴重かつ豊富な情報とその熱意は、参加いただいた会場の方々の心にも届いている様子が、その表情から見受けられました。
約2年ぶりの開催となった救護セミナーは、新型コロナ感染症対策でしばらく遠のいていた、人と人の熱意が互いに感じ合えるこの空間のありがたさを、改めて再発見できた時間でした。これからも感染症の動向を見ながらではありますが、セミナーを通じ、多くの方々と、学びを共有できたらと思っています。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)