新型コロナウイルスの感染拡大で、昨年から売り上げが激減している苫小牧市錦町のクラブ阿房宮(あぼうきゅう)。9月30日で道への緊急事態宣言が解除されたが、店主の本山ちか子さん(40)は「常連の方が心配して店に来てくれているが、団体利用が全くなくなった」と肩を落とす。
緊急事態宣言が発令されるたび、休業を余儀なくされてきた。「落ち込むこともあったけど、今は新しい時代、感覚になった」と気持ちを切り替える。営業時間短縮の協力金や家賃補助など支援策を活用してやりくりするが、売り上げが前年比3割以上減を条件にした持続化給付金など、対策によっては対象から外れることもある。
店では抗菌作用のあるスプレー剤を散布し、オンラインによる接客や1次会利用のPR、オードブルの提供、悩み相談など、できる限りのことをしてきた。本山さんは「去年より今年の方が状況は悪いけど、私たちより大変な思いをしている人もいる」と前置きしつつ「実態に合った対策があるとありがたい」と願う。
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北海道中小企業家同友会苫小牧支部の髙橋憲司支部長は「コロナ以外にも、国際情勢の変化で原材料や資材、原油価格の高騰があり、地域経済は厳しい状況」との認識を示す。巣ごもり需要でコンビニエンスストアやスーパーなどは売り上げが増えたが、飲食や観光などの苦境は限界に近づいている。
髙橋支部長が経営する飲食店3店も、1店は昨年5月から、2店は今年2月から休業中。雇用調整助成金を申請して従業員の雇用を守る。不動産業で市内中心部のビルを飲食事業者に貸しているが、家賃の支払いが滞って閉店したケースもあった。
キャッシュレス決済などICT(情報通信技術)の導入もコロナ禍で加速しているが「変化が急激すぎると対応が困難になる。十分な対策を練らないと取り残される人も出てくる」と指摘する。国や道、市がコロナ対策でさまざまな支援金、補助金を打ち出しているが、経営者らに情報がしっかり伝わらず、インターネット申請などで苦戦するケースもみられる。
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苫小牧商工会議所が2020年1月に設置した相談窓口には、国の一時支援金や月次支援金に関する問い合わせが増えている。相談した事業者のうち約8割が非会員で、今年9月までに事業者の申請421件をサポートしてきた。
冨田聡子専務理事は「いろいろな制度があるが、まだまだ知らない人がいる」と話し、「今後は感染予防と経済の両立を進める政策が必要。景気が回復しないと借り入れをした事業者の返済に大きな影響が出る」と訴える。