■コロナの猛威
全日本選手権後、苫小牧市内で行われた男子日本代表合宿参加者に新型コロナウイルスの陽性者が出た。2020年最後に予定されていた白鳥王子アイスアリーナ=苫小牧市=でのジャパンカップ対東北フリーブレイズ戦が延期に。21年1月中旬の対ひがし北海道クレインズ2戦(釧路市)は開催されたが、その後は政府の緊急事態宣言によって試合が相次いで中止された。
同杯参加5チームによる8回戦総当たり(1チーム32試合)は、6回戦総当たり(同24試合)に短縮。王子イーグルス(現レッドイーグルス北海道)は約1カ月間隔で試合が巡ってくる難しい日程を強いられた。「コロナは自分たちではコントロールできないこと。目の前にある試合や練習など、自分たちができることだけに集中しよう」。菅原宣宏監督の言葉を受けた選手たちは、感染症に惑わされることなく地道に調整を重ねた。
■連勝街道
2月は度重なる日程変更の妙で東北フリーブレイズとの4戦があった。まずは13、14両日にホーム苫小牧で迎えた2戦を連勝。特に2戦目はFW中屋敷侑史(23)が、所属5年目で初のハットトリックを決めるなど9―3で大勝し、全日本敗戦の鬱憤(うっぷん)を晴らした。
続く20、21両日は会場を青森県八戸市に移して再び連勝。20日には4―0で17試合ぶりの完封試合を達成するなど、2試合で失点はわずか1と鉄壁の守備が光った。「攻守にチーム力が上がっている」。監督は手応えを口にした。
■ジャパンカップ制覇
勝率を8割に乗せ、優勝へあと1勝と迫った3月20日。東京で2位栃木日光アイスバックスと激突した。相手は逆転優勝の目をわずかに残し気合十分。王子は第1ピリオドに先制したが、その後3度追い付かれ延長戦に持ち込まれた。
緊迫した試合で好守を見せていたGKドリュー・マッキンタイア(37)が延長戦わずか数秒で負傷。控えの成澤優太(33)が急きょ出場した。「優勝は懸かっていたけど深く考えず無の境地だった」と危機を救うと、FW高橋聖二(28)が決勝弾。この試合は日光側の計らいで、21年度からクラブ化の王子がホーム用の赤いユニホームを着ていた。氷上には高橋を中心に真っ赤な歓喜の輪ができた。
■クラブ化への意気込み
同杯優勝後の残り3試合はクラブ化に向けた強い意思表示とも取れる戦いぶりだった。3月21日の栃木日光戦を6―0で完封勝利。27、28両日に苫小牧開催された対横浜グリッツ戦は5―2、9―0とアジアリーグ新規参入チームに格の違いを見せつけた。
1926年から95年にわたって続いた「実業団王子」として有終の美を飾った20~21シーズン。「この優勝はクラブ化につながる」とDF山下敬史主将(33)は語った。
(北畠授)