アイスホッケーアジアリーグの王子イーグルス(現レッドイーグルス北海道)が2020~21シーズンの戦いを終えた。新型コロナウイルス禍の逆境に負けず驚異の勝率8割超えでつかんだジャパンカップ優勝。「実業団王子」として挑んだ最後の全日本選手権3位の悔しさ。赤の軍団が歩んできた今季の軌跡をたどる。
■コロナ禍の船出
チームは例年通り昨年6月中旬から全体練習を開始した。いつもと様相が違うのは目に見えないウイルスとの戦い。独自の感染症ガイドライン(指針)にのっとりながら、慎重にトレーニングを重ねた。
ただ、ロシア、韓国勢を含めた通常のアジアリーグは氷上練習を開始した7月8日に中止が決定。国内5チームによる代替のジャパンカップ開催の報はそこから1カ月以上も時間を要した。それでも選手たちは「いつ試合が来てもいいように準備をするだけ」と動じる様子はなかった。
■抜群の攻撃力
10月10、11両日、本拠地白鳥王子アイスアリーナに20~21シーズンからアジアリーグに加盟した横浜グリッツを迎え連戦した。結果は8―1、12―0と大勝。その後はFW久慈修平(33)、中屋敷侑史(23)が一時最多得点争いを繰り広げるなど、チームは年内の14試合で平均5・3得点と攻撃力がさえ渡った。
相手ゴール前に人数をかける攻めの形が試合ごとに熟度を高めた。菅原宣宏監督が「どのセットでも得点できる」と手応えを口にするほど。一昨年のアジアリーグレギュラーリーグで1位だった1人多いパワープレーの成功率(32・4%)はさらに向上し、5割近くで推移したことも11勝3敗の首位独走を後押しした。
■不発に終わった全日本
新型コロナの影響で来日が遅れていた守護神ドリュー・マッキンタイア(37)、FWタイラー・レデンバック(36)両外国人が10月下旬にようやく合流。選手層に一段と厚みが出た中で12月の全日本選手権(青森県八戸市)を迎えた。
10月1日にクラブ化が発表され、同大会で過去最多37回の優勝を誇った「実業団王子」として挑む最後の戦い。いつになく気合十分だったが、初戦となった東北フリーブレイズとの準決勝を2―3で競り負けた。ジャパンカップで見せていた自慢の攻撃力は最後まで機能せず、DF山下敬史主将(33)は「なぜ大事なときに自分たちらしくないホッケーができなかったのか」と頭を抱えた。
ただ、続く栃木日光アイスバックスとの3位戦は「気持ちを切り替えてチーム一丸になって戦えた」と言うFW中島彰吾(27)の活躍もあってゲームウイニングショットの末4―3で勝利。続開中のジャパンカップ優勝に向け「ここから一つも負けない気持ちで臨む」との力強い言葉が印象的だった。