北海道を代表する「春告魚」と言えばニシン。例年、石狩湾新港など日本海側で釣れ始めると、苫小牧など太平洋沿岸でも1、2週間ほどずれて釣れだす。”かずのこ”を抱えた早春の大型ニシンを求めて、多くの釣りファンが港に繰り出している。
苫小牧港では今季も2月下旬からニシンの知らせが届いた。例年だと、魚が寄った所から魚群の動く方向に従い、居並ぶさおに順に魚信があり、一帯でひっきりなしにさおをあおる光景が広がるが、今年は特定のごく狭いポイントで多少釣れる程度で、魚群自体は小さいよう。全く釣れない日もあるなど、厳しい状況が続いている。
それでも3月に入ってからベテランの釣り人が2桁の釣果に恵まれる日もあり、ニシン狙いの太公望たちが中央北埠頭(ふとう)をはじめ勇払、中央南などの実績ポイントでさおを出している。
日中、春らしい陽気にやや強い北寄りの風が吹いた15日午後、貨物船が離岸した後の西港中央北埠頭(木材埠頭)には数十組の釣り人が訪れていた。釣り方はサビキが中心でジグサビキが数組。カレイ狙いの投げ釣りも少しいた。ニシンがたまる特定ポイントはやや混雑していたが、岸壁全域では散発的に上がっていた。
市内川沿町の中野目義景さん(86)はこの日朝にさおを出し、昼までに雄と雌合わせて6匹を釣っていた。さおは8~10メートルの3本仕立て。8号針のサビキ仕掛けを付け、電動のしゃくり機を使った。
例年だと1回の釣行で30匹程の数釣りができるものの、「今季は18匹がようやく」と中野目さん。朝方に反応が良く、さおは長い方が有利と言う。はしりの2月は終日さおを出して3匹の日もあったが、3月に入ってからは10匹超に増えた。ただ「今年は不思議なことに雄が多い」とか。それでも中野目さんにこの日、40センチ級の雌の大物が掛かり、表情を緩めていた。
近年、ニシン釣りなどではルアーのメタルジグを付けて投げるジグサビキ、投げサビキが注目されており、女性アングラーがジグサビキでニシンを狙う姿も。苫小牧市入船町のエビス釣具店によると、西港では特に産卵後の4月以降、投げサビキで釣果が出やすいという。戦略や楽しみ方の多様化もあり、釣りファンは増えている。
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苫小牧港の各埠頭では荷役が行われていることが多い。地方や港によっては荷役業者、漁業者と釣り人のトラブル、事故防止の観点から、岸壁への立ち入り規制の強化措置が取られている港もある。ごみのポイ捨てや荷役に支障のある駐車などを含め、埠頭での迷惑行為や危険行為は慎みたい。