5 過酷な日々続く医療機関 思いに寄り添い正しく伝える

  • 取材ノートから, 特集
  • 2020年12月19日
苫小牧発熱検査センターの模擬PCR検査=11月
苫小牧発熱検査センターの模擬PCR検査=11月
報道部・半澤孝平
報道部・半澤孝平

  新型コロナウイルス感染症の流行が止まらない。先行きの不透明さに加え、状況は目まぐるしく変化し、情報を追い切れている実感もない。学ぶことや扱う情報は膨大で、拭い切れぬ不安と焦りを抱えながら、毎日の取材をこなしている。それは今、誰もが多かれ少なかれ、同じような思いを抱いているのではないだろうか。

   この秋から医療分野を担当し、苫小牧保健所や市立病院、市医師会などに通う日々が始まった。9月の4連休以降、感染が再拡大した時期。取材をするたびに感染者の増加傾向を肌身で感じ、めまいに似たものを覚えた。担当した当初は胆振管内の感染者は、出ても1日当たり1~2人だったが、連続発生が当たり前のようになり、新規感染者数も過去最多の更新が続いた。10月には市内でクラスター(感染者集団)が発生するなど、緊張感は増すばかりだった。

   コロナ感染が市内で初めて確認された2月以降の状況を把握しようと、道が毎日発表するデータと首っ引きで、独自にグラフなどを作った。今何が起きているのか、今後どんなことが起こり得るのか、ヒントを少しでもつかもうとわらにもすがる思い。胆振管内の感染者を月別に比べたり、医師会の苫小牧発熱検査センターの現状を調べたりして紙面に生かすことができた。

   11月には感染拡大を受けて検証記事も執筆した。医療機関など関係者は多忙を極め、門前払いされてもやむを得ない中、多くの人が「感染予防のためになるなら」「現状を正しく伝えてほしい」などと温かく取材に応じてくれた。朝は医師会に状況確認の電話を入れ、夕方に道の発表をチェックすることも習慣になった。企画を終えて正直ほっとしたが、さらに高い山があることも実感している。

   医療体制一つにしても、東胆振唯一の感染症指定医療機関、市立病院の現状をはじめ、同病院と王子総合病院が担う二次救急や高度な周産期医療のバックアップ、医療従事者の労働環境など、地元紙として取り上げるべきテーマは多い。コロナと戦い、ストレスを抱える医療従事者の思いに寄り添うことも大切だ。コロナ禍は今なお続き、終息する気配は見えない。過酷な日々と誠実に向き合う読者の声に、応えられる取材を心掛けたいと思う。

  (終わり)

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