ウトナイ湖の湖畔では、葉を落とした木々が肌寒そうに立ち並び、すっかり冬の景色に様変わり。この季節を迎え、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターでは、ある小鳥の問い合わせが頻繁になっています。それは、「シマエナガ」に関するものです。
シマエナガとは主に北海道に生息するエナガ(スズメ目エナガ科)の亜種で、ふわりと真っ白い羽に包まれた体に、つぶらな瞳。その愛嬌(あいきょう)たっぷりの姿に、近年では「雪の妖精」の愛称で親しまれ、人気を博しています。わが家の6歳の娘も、すっかりこの妖精に魅了され、そのグッズを見つければ、とにかく欲しくてたまらないくらいです。
そんな大人気のシマエナガ。愛称に「雪」とあるように、冬の季節のイメージが強いのですが、実は留鳥で、一年中北海道内で生息している野鳥です。主に平地から山地の林や、木の多い公園などで観察することができます。
小柄な野鳥ということもあり、夏の時期は木の葉が生い茂る環境だったり、子育て中は群れをつくらなかったりということもあり、その姿を発見しづらいのですが、冬季は木の葉が落ちることや、同種やシジュウカラの仲間と群れをつくることで、観察できる機会はぐっと増えます。それでもなにせ、すばしっこい小鳥ですから、近くにいても気が付かない、という方も少なくありません。
身近な環境に生息するシマエナガでも、意外にも救護の現場では、私はこれまで1度しか出合ったことがありません。ちょうど5年前のこの時期、建物に衝突したのか飛べずにいるところを保護されたシマエナガ。一過性の脳振とうだったのか、診察の結果では大きな異常もなく、すでに容体は安定していました。体重を量るとわずか8グラム。国内最小の鳥キクイタダキ(スズメ目キクイタダキ科)の体重4~6グラムに次ぐ軽さに、改めて小ささを実感したものの、診察中はずっと私の手にかみつこうとしていたり、リリースの時も威嚇しながら飛んでいったりと、小さな体でも、決してひるむことのない気の強さが印象的でした。
身近にいて、どこか遠い存在のシマエナガ。これからの季節、冷え込みが一層厳しくなってきますが、ぜひ林を歩いてみませんか。木々の間からひょっこりと、かわいい妖精が姿を現してくれるかもしれません。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)