9月に千葉市で開催されたアクションスポーツの世界最高峰の国際大会、Xゲームズ千葉でスケートボード男子ストリートの白井空良(22)=ムラサキスポーツ=が悲願の初制覇を果たした。競技の本場・米国が発祥の地で、「子どもの頃から夢見ていた」という特別な大会での栄冠だ。
▽パリで燃え尽きて
パリ五輪は、予選落ちした東京大会に続いて満足のいく結果を残せなかった。現地入り直前に体調不良のため入院。本番の会場となったコンコルド広場では十分な練習ができなかった。何とか決勝に進んでメダル圏内につけたが、最終試技で金メダルの堀米雄斗に逆転されて4位に終わった。
東京五輪からパリまでの歩みを振り返り、「この3年間はそんなに簡単なものではなかった」と言う。五輪予選では欧州、中東、南米を転戦。本番が終わるまでの疲労は思ったように抜けず、パリから帰国後はほとんどスケートボードに乗らない日々を送っていた。燃え尽きたような状態になっていたと明かした。
▽深めた自信
悩んだ末に出場を決めたXゲームズは、自信を深める機会になった。45秒でトリック(技)を詰め込む「ラン」のみで競った決勝は、五輪でも戦ったナイジャ・ヒューストン(米国)らとのハイレベルな争いに。最終3本目の試技で、地面が見えない後ろ向きの姿勢でレールを滑り降りながら、デッキ(板)を回転させて着地に向かう大技に成功。独創的な技を持つ白井らしさを存分に見せつけ、見事な逆転劇を演じた。
五輪連覇を果たした堀米は盟友であり、ライバル。男子ストリートはどうしても堀米の存在に注目が集まりがち。白井も屈指の実力の持ち主だが、「(他の)日本人が上手で、自分の成長に気づけなかった」と打ち明ける。これまでは気持ちの弱さもあり、際どい勝負でミスが出て敗れることが多かった。それだけに今回の結果には手応えを感じている。「接戦で(やりたい技を)決められたのは大きい。成長できた」と実感を込めた。
▽視線を先に
五輪では2大会続けて悔しさを味わっただけに、4年後のロサンゼルス大会に懸ける思いは人一倍強いだろう。「良いスタートが切れたし、自分の滑りを皆さんが分かってくれたと思う。一つ一つの大会を優勝できるように頑張っていけば、ロスが近づいてくる」。スケーターとしての新たな勲章を手に、力強く再出発した。