初のバックヤードツアー 救護の現場を案内

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2020年11月20日
ツアーで紹介したハヤブサ。衝突事故により右翼損失

  先月、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターで「バックヤードツアー」を開催いたしました。これは、当センターで一般公開していない救護施設を案内するもので、実際の救護現場や保護された傷病鳥を間近に見てもらい、救護活動の理解を深めていただくことを目的としたものです。

   私自身、このセンターでの勤務も14年目を迎え、これまで救護に関連するさまざまな行事を行ってきましたが、意外にも今回のように「バックヤードツアー」として企画し、参加者を募ったのは初めてのことでした。

   当センターの救護施設は、日々多くの傷病鳥獣が傷の手当てを受けたり、リハビリを行ったりしています。また、中にはその傷が回復し切れず、自然界に戻れなくなってしまったものもおり、施設内に通常20個体前後の傷病鳥獣が保護されています。

   これまでは衛生的な観点から、救護施設の公開は原則行わず、年に数回程度、行事の一環や団体対応などで、衛生対策が取れる場合のみ案内を行ってきました。その代わりとして、救護の現状を発信すべく、センター内に展示コーナーを設け傷病鳥獣の紹介をしたり、通信やフェイスブックで情報公開を行ったりしてきたのですが、やはり実際の現場を見たいという多くの方々のご希望を受けて、このたび開催することとなったのです。

   バックヤードツアー当日は、午前と午後の2回に分けて実施。お子さまから大人の方まで、幅広い年代の方々に参加いただきました。

   ツアーでは、5年前にプロペラ機に衝突し右翼を失ったハヤブサ(ハヤブサ目ハヤブサ科)や、8年前に交通事故で両翼を骨折したトビ(タカ目タカ科)など、十数羽の傷病鳥を紹介しました。そして、私たち人間の暮らしが原因で大けがをし、羽ばたくことができなくなったこと、それでも懸命に生き、こうして野生鳥獣保護の普及の現場で活躍している鳥もいることをお伝えしました。

   バックヤードツアーを通じ、傷病鳥獣と同じ空間、同じ時間を共有することの意味深さ、本物の命を間近で感じるからこそ学び得るものがあるのだと、参加いただいた皆さまの表情を見て、私も改めて確信いたしました。今後もまた、ツアーを企画していきたいと考えております。その際はぜひ足をお運びいただけたらと思います。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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