今月上旬、台風4号から変わった温帯低気圧と前線が近づく影響で、大荒れとなった道内。この苫小牧でも強風が吹き荒れ、ウトナイ湖の観察路では木が倒れ無数の葉が散乱しました。これほどの悪天候は、自然界に生きる野生動物たちにとっても脅威そのもの。ウトナイ湖野生鳥獣保護センターには、このように天候が関連しているであろう傷病鳥が搬入されることがあります。
先日の大荒れの翌日、当センターに運び込まれたのは、普段は海上沖合で生息するオオミズナギドリ(ミズナギドリ目ミズナギドリ科)でした。今回の強風で陸に飛ばされたのでしょうか、市内で飛べずにいるところを保護されました。当センターではこれまで、他のミズナギドリの仲間は何度か搬入歴がありましたが、オオミズナギドリの保護は今回が初めてでした。
この種は、繁殖期を除いては、地上に降りることはほとんどなく、昼も夜も海で過ごす海鳥です。行動圏はかなり広く、採餌のために1000キロ以上も離れた海域に行くこともあるとか。これを可能にしているのが、ミズナギドリが獲得した飛翔能力。海上に発生する風を巧みに利用し、ほぼ羽ばたくことなく長時間飛び続けることができるのです。
しかし、高度な飛翔力を持ち合わせている半面、脚力は弱く、着陸や飛び立ちなど陸上での行動は得意ではないと言われています。そのためもあるのか、先日の強風で陸に不時着したであろうオオミズナギドリも、ただじっと動かず保護された場所でうずくまっていたとのことでした。
残念ながらこのオオミズナギドリは、搬入時すでに衰弱著しく、再び海の上で羽ばたくことはかないませんでした。
近年、海洋プラスチック等の問題で、ただでさえ生息環境が悪化している海の生きものたち。そのうえ、容赦のない自然界の猛威。特に海鳥たちにとって、安全な場所を確保できない大海原での日々は、私たちの想像を絶する試練の連続でしょう。それでも、海で生きていかなければいけない彼らの日々が、どうか少しでも穏やかなものでありますようにと、心から願うばかりです。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)