米鉄鋼大手USスチールの買収手続きが正式に完了したことを受け、日本製鉄の橋本英二会長らが19日、記者会見した。橋本氏は「経営の自由度と採算性については確保されており、当社にとって満足のいくものだ」と大型買収の意義を強調。また、トランプ米政権の理解と協力を得ながら新生USスチールの経営が始まるとして、「トランプ大統領の優れた判断に敬意を表したい」と語った。
買収総額は約140億ドル(約2兆円)で、日鉄はUSスチール株を1株当たり55ドルで買い取り、完全子会社化した。これにより、約1年半にわたる買収劇が決着した。
両社によると、USスチールは定款変更などの手続きの後、米政府に議決権のない「黄金株」を発行する。米政府は独立取締役1人を選任する権利を持つほか、USスチールの本社や生産・雇用の国外移転、社名変更や設備投資の削減などに米大統領の同意が必要となる。
買収完了に先立ち、両社と米政府は、黄金株の発行や、日鉄が2028年までにUSスチールに約110億ドル(約1兆6000億円)を投資することなどを盛り込んだ「国家安全保障協定」も締結している。
日鉄は23年12月にUSスチールの買収を発表。だが、米国の象徴的企業が買収対象となったことで大統領選も絡み政治問題化。バイデン前大統領は買収計画の放棄を命じた。
しかし、日鉄は投資の大幅な積み増しを約束するなど、米側への説得を継続。今年1月に就任したトランプ大統領は容認に転じ、この文言の削除を命じた大統領令に署名していた。