厚真町は、歴史的建築物の保存・活用に関する条例を1日付で制定した。町の開拓期からの歴史的・文化的価値のある建築物や古民家の保存・活用を促進させるとともに、それらが持つ技術や伝統を次世代に継承するのが狙い。道内で同条例を制定するのは、厚真町が初めてという。
歴史的・文化的価値のある建築物や古民家を保存・活用していくことは、国土交通省、文化庁などが推奨しており、地域の観光資源としての意義も大きい。
その一方で、整備にかかる費用負担は通常より大きい。現行の建築基準法や消防法の基準を満たすことができず、設計変更などを強いられたり、伝統的な構造や機能を反映させられなかったりする事例も少なくない。
町はこれまで3軒の古民家再生事業を行って浮き彫りになった反省を基に、今回の条例策定に着手した。条例を設けることで、基準法で定められる規制のうち、一部を代替対応できるようになるなど、保存・活用上の条件を緩和できる。町まちづくり推進課の担当者は「古民家の意匠性、特徴を残しつつ、活用していくのが目的。既存の古民家を用途変更して活用することもできる」と話す。
関係者によると、同条例を制定している自治体は全国的に見ても例が少ない。北海道建築審査会の会長を務める札幌市立大学の羽深久夫名誉教授は「現行の建築基準では避難通路や消防法の規制が厳しく、今までは(建物を)残すという考え方が主流になっていたが、民泊や飲食店としての利活用など厚真町の取り組みは画期的なことだ。他の市町村にも波及していけば」と期待する。