むかわ町、北海道開発局は国道235号の「鵡川橋」(約340メートル)を撤去する考えを明らかにした。交通量の減少に加え、2018年9月に発生した胆振東部地震で損傷し車両が通行できなくなったこと、橋落下などの二次被害を防ぐことが理由。撤去時期は確定していないが、撤去に向けて4月から現地で詳細な測量や調査をスタートさせる予定だ。
国土交通省の資料によると、鵡川橋は1954(昭和29)年12月に完成。苫東開発以降は交通量が増大したため81年に拡幅事業に着手し、85年には鵡川橋と並行する「鵡川大橋」が出来上がった。翌年から鵡川橋は苫小牧方面から日高町方面へ、鵡川大橋は反対への一方通行とした。このうち鵡川橋に架かるアーチは、町のシンボルとして多くの町民に親しまれてきた。
しかし、日高自動車道の開通区間が日高町まで延びたことを背景に交通量は徐々に減少。厚真インターチェンジ(IC)開通後の99年調査では、1日当たりの自動車交通量が約2万台だったのに対し、2010年は7300台を割り、15年は6900台を下回った。
さらに胆振東部地震によって、アーチ構造を支える支点部を留める鉄筋のボルトが破断したほか、路面に段差ができるなど橋梁(きょうりょう)全体が大きく損傷。落橋を防ぐ応急処置はしたが、使用できなくなって通行止めとし、鵡川大橋を対面通行とした。国交省と町の協議により撤去する方向性となり、町などが2月末、町内で町民説明会を開いた。
町民からは撤去についておおむね理解を得たが、「町を紹介するシンボルであり、町民の思い入れもある」と鵡川橋がなくなることへの寂しさや、「片側1車線を大型車両が通行することもあり、(車線が狭い)鵡川大橋走行時の運転には配慮を望む。生活者の身の安全を確保してもらいたい」といった要望があった。
竹中喜之町長は「歴史的な景観を町民の記憶や記録として残していけるように、道開発局との協議に努める。撤去後も何らかの形で後世に伝えていくようにしていきたい」との考えを示し、理解を求めた。道開発局の担当者は「工事に伴う騒音、安全確保など周辺の地域住民に迷惑を掛けないようにし、理解を得ながら進めていきたい」と話した。