白老町教育委員会は今年度、地域文化の継承や後進育成に寄与した人物を顕彰する「伝統文化継承者」に山崎シマ子さん(82)=高砂町=と菅野節子さん(78)=北吉原=を認定した。共にアイヌ文化の発展に寄与した功績が評価された。24日には町中央公民館で認定書授与式が行われた。
山崎さんは1986年、旧財団法人アイヌ民族博物館に奉職し、女性の手仕事を中心とした伝統民具工芸品の復元、制作に携わってきた。98年には伝統工芸サークル「テケカラペ(手仕事)」を結成。伝統工芸技術の継承と保存に尽力した。
菅野さんは1978年、アイヌ文化賞受賞者の上武やす子氏(登別市)に師事し、アイヌ文様刺しゅうの知識や技能を習得。2013年にアイヌ刺しゅう活動団体「エミナ(笑い)の会」を立ち上げ、現在も刺しゅうの奥深さを探究し続けている。
伝統文化継承者は今年1月17日、町教委からの諮問を受けた6人の委員からなる町文化財等運営審議会が▽知識・技能に習熟し今後も後継者の育成に携わる可能性がある▽技量の保持が広く認められている―などの基準で候補者を選考。31日付の審議会による答申に基づき、2月14日開催の第2回教育委員会で決定した。
認定書授与式で安藤尚志教育長は2人に、「今後も町の匠として研さんされ、アイヌ文化の魅力と素晴らしさを広く発信して」とエール。審議会の川西政幸会長(79)も「健康に留意されつつ、ますますの伝統文化継承に尽力を」と激励した。山崎さんは「先祖が残してきた技法に沿って続けていきたい」、菅野さんは「笑顔を絶やさず活動を続けていく」と抱負を述べた。
町伝統文化継承者は、認定を始めた2007年度から今回含め25人となった。分野はアイヌ文化、木彫り、鍛造など。認定者は町の無形民俗文化財にも指定される。
仙台藩白老元陣屋資料館では3月11日から31日まで「紡がれた技、アイヌの伝統的手工芸」と題する2人展の開催を予定している。2人がそれぞれ手掛けたアットゥシ織りやゴザ編み、縫製など手工芸品計約40点を並べる。期間中には展示解説会も開き、現代に受け紡がれた技と心に迫る。