台湾花蓮県(かれんけん)秀林郷(しゅうりんごう)出身のアーティストで文化伝承者の東冬侯温(トントン・ホウウェン)さんら、台湾のアート関係者3人の旅行グループが17日まで4日間白老町に滞在し、町内各地域を巡った。文化の視察交流が目的で、町民とも触れ合った。
一行は、東冬さんと展覧会の企画などを行うキュレーターの呂瑋倫(リュ・ウェイルン)さん(29)、陶芸家の翁程軒(ウォン・チェンシュアン)さん(29)。3人と交流がある美術評論家連盟会長で多摩美術大学客員教授の四方幸子さん(64)が引率者として同行した。
14日に来日して白老町に入り、町内は四方さんの知り合いで白老文化芸術共創ディレクターの木野哲也さん(44)が案内した。15日は虎杖浜地区の屋外展示写真やアヨロ海岸、アフンルパロ(あの世への入り口)などを見学。アイヌ民族のムックリ(口琴)の制作や刺しゅうを体験し、飛生地区のアーティストや町民と懇談した。16日は民族共生象徴空間(ウポポイ)で伝統舞踊や国立アイヌ民族博物館の展示資料を視察。その後、白老中央生活館で白老民族芸能保存会の会員らと歌や踊りで交流した。17日に白老を離れ、帰郷した。
一行のうち、東冬さんは台湾の先住民族タロコ(太魯閣)族で、伝統儀式などをつかさどる祭司の家系。保存会の会員らが交流の場で、エムシ・リムセ(剣の舞)やク・リムセ(弓の舞)などを披露すると、「幼い日に祖母から教わった踊りを思い出した」と涙ぐんだ。会員との出会いに感謝して現地の歌を披露し、会場を大きな拍手で包んだ。
東冬さんは白老について「豊かな職人技や芸術文化の土壌があり、オープンな精神を感じた。アイヌの人々が過去に直面した歴史的状況を自分なりに理解した」とし、今後も交流を続け「台湾先住民の各部族が社会で直面する問題やアイデンティティーを持ちより、互いの経験を生かし合っていることを伝えていきたい」と述べた。
踊りを披露した保存会理事の飯島宏之さん(40)は「共に輪になり踊ることで、平和の願いを共有できたのでは」と話し、木野さんは「(今回の視察交流が)白老と台湾がそれぞれの文化を尊重し合って交流していくきっかけになれば」と期待していた。
白老町は昨年8月、台湾の花蓮県秀林郷と友好交流推進協定を締結している。
タロコ族 台湾東部の花蓮県秀林郷、萬栄郷、卓溪郷などで暮らす人口2万2000人ほどの先住民族(原住民族)。東冬さんは祖父母から言語と文化を直接学び、タロコ語を自在に操る。