厚真町の市街地に店を構えて50年以上、町民に親しまれてきた老舗の飲食店がある。同町本町1で串料理などを提供する「焼き鳥おやじ」。1972(昭和47)年の創業から昨年で半世紀を迎えた。胆振東部地震、新型コロナウイルス感染拡大による消費低迷、先代の逝去など、さまざまな困難を乗り越え、娘と孫娘が二人三脚で先代から受け継いだ味を守ろうと店を切り盛りしている。
店を運営するのは田中由紀子さん(47)と小谷由夏さん(26)。先代は田中さんの父親で、小谷さんの祖父でもある淡(きよし)さん(故人)。
店は2018年9月に発生した地震で停電に見舞われ、店内の食器が割れるなどの被害を受けた。感染症が流行し始めた20年には淡さんが肺炎で倒れて入院。コロナ禍も重なって半年ほど休業した。
町民からは「いつからやるの」「続けて」という声が寄せられたが、「店主がいない中、自分一人で店を切り盛りできるだけの自信がなく、一歩を踏み出せなかった」と田中さん。そんな時、小谷さんが「じいちゃんのために」と勤務先を退職して店を手伝い始めたことに背中を押され、淡さんの復帰を願って同年秋に再開した。
淡さんは病状が悪化し、21年に亡くなってしまったが、「50年続けてきた店とこだわりの味を守りたい」と決心。昨年は店舗内の小上がりをテーブル席に変えるなど一部を改修し、11月にリニューアルオープンした。
メニューの中心は定番の鳥精や豚精、鳥ももになるが、フライドポテトやチーズ巻きなどの揚げ物も追加した。先代の頃と比べて客層は若くなり、人が人を連れてくる新たな流れができつつある。田中さんは「コロナが落ち着いたら、ワッと人が増えて、誰でも来やすいお店にしていきたい。先代の残した味は変えずにやっていく」と話す。
「かつての活気を取り戻したい」―。2人は口をそろえる。