ウポポイでチセ復元 今秋完成へ 白老

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  • 2020年7月24日
伝統的な技法で建築が進むウポポイ内のチセ
伝統的な技法で建築が進むウポポイ内のチセ
チセの内部構造。中央に炉を持つ1間を基本としている
チセの内部構造。中央に炉を持つ1間を基本としている

  アイヌ民族文化財団(本部札幌市)は、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)でチセ(家屋)を復元する作業に取り組んでいる。白老地方のチセの形態を継承し、伝統技法で建てる様子を来場者に公開している。骨組み作業は順調に進み、今後、屋根や壁のかやぶきを経て10月ごろに完成させる予定だ。

   床面積約30平方メートルのチセは、昔ながらの技法や建物の構造を来場者に公開するプログラムとして、ウポポイの「伝統的コタン」エリアに建設。国や同財団が開業前に設けた4棟のチセに並ぶように造っている。

   アイヌ民族はチセを建てる際、カシワやカツラ、クリなど、その土地に多く自生し、腐りにくく長持ちする樹木を柱、梁(はり)、垂木といった骨組みの材料に利用した。今回の復元に当たり同財団は、骨組み材としたクリやマツを白老町有林から譲り受けて活用。屋根や壁にふくカヤは胆振管内から調達した。

   建物の構造には地域性があり、今回は白老地方の伝統を受け継ぎ、窓を東に1カ所(神窓)、南に2カ所設ける設計とした。母屋の入り口から中に入って右側の窓を2カ所とするのは、日高地方のチセも同様だが、道東では1カ所としていた。神窓の方角も土地によって南東や西などと異なりがあった。

   また、チセの復元に際しては内部を1間とし、中央部分に炉、神窓の近くに宝物置き場を備える基本構造を順守。財団職員らによる骨組み作業は終盤を迎えており、8月以降に屋根や壁のかやぶきの作業を進める予定だ。

   建築は10月ごろに終えて、完成祝いの儀礼「チセノミ」や、餅まきの「ハルランナ」を予定している。

   アイヌ民族はチセの炉を神聖視し、炉を中心に家族や客が座る所、寝床の場所も厳格に定めていた。財団は、別のチセの内部見学プログラムと併せて、暮らしの決まり事について来場者の理解が深まることも期待しており、「普段は見られない伝統的な建築の様子を見学し、かつてのアイヌ民族の生活に想像を巡らせてほしい」としている。

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