6 ダイナックス 小川(おがわ) 真(まこと)社長 新分野のクラッチを伸ばす 9月にワイナリーが完成

  • 企業トップに聞く 2025, 特集
  • 2025年1月21日
ダイナックス 小川真社長

  ―2024年を振り返って。

   「自動車メーカーの認証不正で、前半は数量が減るなど影響を受けた。その後も戻ってきたが、減った分を取り返せず、数量的には計画より低い。材料価格がアップし、(物流業で時間外労働の上限規制を適用する)2024年問題で輸送コストや人件費も上がったため、お客さんにお願いして価格転嫁を進め、売り上げ的には23年並みに戻せるかとは思う」

   ―電気自動車(EV)用インホイールモーター(IWM)の新たな製造拠点として期待される苫小牧第6工場の現状は。

   「(昨年)先行開発ラインでモーターの生産ラインを動かし、いつでも量産できる状態になるよう、試作して準備を整えている。IWMも、一般的なモーターも、量産できる。いつ受注しても対応できる。

   われわれが狙っている領域は動く場所が限定されたところ。例えば飛行場で作業をする特殊車両や、ゴルフ場で芝を刈る芝刈り機などの開発を進めている。いろんな作業時に使うモーターを26年から立ち上げ、本格的に数が出るのは27年ごろ。まだモーターの実績がなく量産もしてないため、数が少ない注文にも専用設計で性能も合わせる。モーターを制御する電子部品インバーターも開発し、セットで提案している」

   ―今年の見通しは。

   「事業環境が電動化の普及で左右されることや、ヨーロッパの車両がなかなか売れないところもあり、数量的には厳しいと思う。トランプ氏が大統領に就任するが、カナダ、メキシコ(からの輸入に)25%の追加関税という話もあり、どういう影響があるのか今はまだ見えてない状況」

   「楽しみな部分もあって、24年にハンガリーの工場でバッテリーEV、EV向けのクラッチが立ち上がった。25年から本格的に流れ始めるので、新しい分野に使われるクラッチもどんどん伸ばしていきたい」

   「23年に創業50周年を迎え、一貫して摩擦材を使った(自動車部品)クラッチ分野、ニーズに注力してきた。摩擦材は自動車分野以外でも使える。50年間の技術があり、いろんな分野から引き合いを受けている。今年はここを伸ばしたい」

   「クラッチは、摩擦係数が高いことが良しとされてきたが、それとは別に摩擦係数を極力低くする取り組みもしている。低摩擦の領域は(環境面で)規制が強くなり、使える素材が限られてくる中、うちの摩擦材は問題がない。今後伸びる分野だと思う」

   ―脱炭素の取り組みも盛ん。2023年度は苫小牧工場だけでもPPA(電力販売契約)による大規模太陽光発電設備(メガソーラー)、カーポート型メガソーラー、木質バイオマスボイラーが動き出した。

   「昨年は効果として刈り取れる段階に入った。目標では30年に(温室効果ガスを)19年比で46%削減し、50年にカーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)。24年は37%ぐらいまで低減できる見通し。毎年1%ずつ細かい省エネを積み上げていく。『CN道場』をつくり、省エネに必要な知識や技術を習得する講座を開き、社内の活動を活性化していく。

   25年は太陽光発電で売電し、二酸化炭素(CO2)のオフセット(相殺)に適用することでCO2を削減する、バーチャルPPAにトライする」

   ―安平町のワイン事業は。

   「3年で(ブドウの)苗を植える計画で、最終の24年は7月までに1万5000本の苗を全部植えることができた。安平町の皆さんに楽しみにしてもらい、非常にうれしい。予定通り9月にワイナリーが完成する。ワインを通じて地域が発展できるようにこれから頑張っていきたい」

   ―厚真町の大沼野営場指定管理は。

   「23年秋から休業してリニューアルし、24年10月末オープン。名前を『大沼キャンプベース』に変え、芝生や園路を再整備し、炊事場を新設。管理棟も改築し、冬季を含め通年営業している。静かな環境でキャンプでき、プライベートサイトは予約も好調。たくさんの人に来てほしい」

  メモ 自動車部品クラッチ製造の国内最大手。本社は千歳市で、苫小牧東部産業地域に製造拠点を構える。安平町でワイン事業、厚真町でキャンプ場運営など、異業種への参入も積極的。

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