【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領(64)による「非常戒厳」宣言を巡り、高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などの合同捜査本部は15日午前10時33分(日本時間同)、内乱容疑で拘束令状を執行し、尹氏を拘束した。現職大統領の拘束は韓国史上初めて。尹氏は談話を発表し、「不法な捜査を認めないが、流血事態を防ぐため手続きに応じる」と述べた。
捜査員は同日早朝、ソウル中心部の大統領公邸で尹氏の弁護士らに拘束令状を提示し、公邸敷地内に進入。大統領警護庁との物理的衝突はなかった。韓国メディアによると、大統領を乗せたとみられる車両が公邸を出発し、高捜庁に到着。今後聴取を受ける。
高捜庁関係者によると、警護庁は敷地内に車両で「壁」を作るなどしたものの、3日の1回目の令状執行と異なり、妨げる警護員はいなかったという。 これに先立ち、尹氏の弁護団は15日、軍事機密施設である公邸に対する責任者の承認のない捜索は制限されるとして、「違法な令状執行」だと反発。公邸前では尹氏の弁護士や与党「国民の力」の議員約30人が集まり捜査当局に抗議した。警察は令状執行を妨害すれば公務執行妨害容疑で現行犯逮捕すると警告した。
尹氏の職務を代行する崔相穆経済副首相兼企画財政相は声明で、「国家機関間の物理的衝突は国民の信頼と国際社会の評価に取り返しのつかない損害を与え、許されない」と強調した。
一方、韓国メディアは捜査当局が警護庁の「強硬派」とされるキム・ソンフン次長を拘束したと報じたが、その後当局は否定した。
捜査本部は3日、令状執行のため公邸敷地内に入ったが、警護員らに阻まれ5時間半で撤退。警護庁はその後、公邸入り口付近に鉄条網を設置したり、車両を並べたりして公邸を「要塞(ようさい)化」した。韓国メディアによると、警察は今回、捜査員1000人余りを招集した。
合同捜査本部は、戒厳宣言後に国会へ軍や警察が投入されたことなどについて、憲法秩序を乱す目的の暴動に該当すると判断。尹氏を内乱の「首謀者」と位置付ける。大統領には在職中に訴追を免れる不訴追特権があるが、内乱罪は例外と憲法に規定されている。