(8)むかわ 2年連続シシャモ漁休漁 資源は回復傾向 地域経済への影響深刻化

  • 年末年始のおもてなし, 特集
  • 2024年12月26日
2年連続でシシャモ漁が休漁となったむかわ町。資源回復に向け、関係者の試行錯誤が続く

  むかわ町の特産で町魚でもあるシシャモの漁が2年連続で休漁となった。鵡川、苫小牧、ひだか各漁業協同組合で構成する、えりも以西海域ししゃも漁業振興協議会が「資源回復が必要」と苦渋の決断をした。地域ブランド「鵡川ししゃも」を販売する水産物加工店を訪れる人が減るなど、町内では影響が深刻化している。

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   今年10~11月のシシャモシーズン、町内の水産物加工店は主に道東産のシシャモを取り寄せて加工し、店頭で販売したが、店によっては「休漁前より客足が3分の1に減少した」との声が上がった。すだれ干しでうま味を凝縮したシシャモを変わらず並べ、町外から来る観光客もいたが、2年連続の休漁により「むかわではシシャモが食べられない」とイメージする人も多かったようだ。

   今年は休漁の影響を受けて、「シシャモずしの元祖」として名をはせた大豊寿司が11月に閉店した。1979年の開店以来、45年間地域に親しまれた同店。干して食べることが一般的なシシャモを、漁期は生で食べることができ、毎年シーズンは道内外から大勢の人が足を運び、列を成した。閉店は売り上げの減少が続いたための判断だが、営業最終日は常連客らが訪れ、惜しんだ。

   町民からの資源回復を望む声は切実だ。11月には町内の永安寺で、境内に柳葉魚(ししゃも)観音菩薩の仏像が建立され、除幕と点眼式が行われた。高さ約3・2メートル、重さ約2トンの立派な仏像。僧侶が読経し、参列者が手を合わせ、1級河川の鵡川に大量のシシャモが遡上(そじょう)することを願った。

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   シシャモは、昭和40(1965)年代には水揚げ量が年間約200トンあったが、鵡川漁協の漁獲量は近年、2020年が3トン、21年が1・4トン、22年には64キロまで落ち込んだ。

   一方、23年から2年連続で休漁したこともあり、資源調査で捕獲されるシシャモが増えた。鵡川ししゃもふ化場では24年度、シシャモ2万4302匹を収容し、前年度の2591匹から9倍以上増加。シシャモは鵡川に戻っている。

   25年以降の漁再開に当たっては、遡上数など各種データを基に、関係者が協議を行う。鵡川漁協の小定雅之専務は「休漁は漁業者にとっても影響が大きい。資源回復に向け、最大限できることをしたい」と述べる。

   休漁で地域経済への影響が続く中、町観光協会は資源回復を願うとともに、昨年から「ししゃもまつり」に代わるイベント「秋の味覚まつり」を開催し、町を盛り上げようと試行錯誤を続ける。

   同協会の小坂幸司会長は「むかわ町にはシシャモ以外に恐竜など観光の核になる資源が多い。町産の野菜や肉を使用した商品開発を行い、町の魅力を広く発信していく」と力を込める。

 (室谷実)

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