新型コロナの長期化は市民に外出控えや「宅飲み」「リモートワーク」をもたらした。生活習慣は様変わりし、5類移行後も続く。人手不足に物価高騰、節約志向もあり、年の瀬で書き入れ時の苫小牧の飲食店は「(客足は)戻ってきているがコロナ前には程遠い」と店主の表情は険しい。
春に飲食店の取材を始めて9カ月。これまで紙面で紹介した店舗は30軒余り。
昼時の限られた時間に目当ての料理を食べようと飲食店に殺到する客、対する店主は鍋を振り次々に注文をさばいていく。厨房(ちゅうぼう)は戦場の様相だ。傍らで見守る記者も高揚感を覚える。
食べる側の「至福のひとととき」は、プロの料理人によってもたらされるものと実感した。
名代の味を守り続ける店、そば打ちを極め本業との二枚看板で人気を博すすし店、独自のルートで仕入れた素材を生かす逸品を提供する店の存在を取材を通して知った。
「お客さまファースト」の商いに徹して「味」と「ボリューム」「健康」に軸足を置く店主たちのひたむきな姿勢には頭が下がる。
各店はコロナ禍や物価高で厳しい状況の中にあっても「(お客さんには)負担をかけたくない」と価格転嫁を抑えてきた。
ある店主は「夫婦2人だから何とかやれてはいるが」と苦しい胸の内を明かしてくれた。
ここにきて、要である米価高騰の直撃を受け、ほとんどの店が「もう限界」と師走を前に一斉に値上げに踏み切った。
かつて昼食代の代名詞だった「1コイン(500円)」は遠い昔話となり、2~3コインの時代を迎えた。
プロが長年培った技と創意、五感で市民を魅了し続ける飲食店と、利用客との出合いをこれからも読者に伝えていきたい。
(神源伸)