〈野球選手とは、ちょうど詩人や画家や歌手のようなものだ。彼らは作られるものではなく誕生するものなのだ〉。1920年代にヤンキースのミラー・ハギンス監督が述べたそうだ。大リーグ史を扱った名著「野球は言葉のスポーツ」(伊藤一雄、馬立勝著、中公新書)にある。
半世紀ほど前、故郷に「打撃の神様」が来た。元巨人軍選手の故川上哲治さんだ。家近くの球場で野球教室があった。V9達成の名将時代にプロ野球中継で見知る人だが、当時は川上さんが実名で巨人軍監督として登場人物の一人となっていたテレビアニメ「侍ジャイアンツ」も男子級友の間で大人気。小学低学年だった小職は近所の年上の顔なじみが指導を受ける様子をダッグアウトの屋根に上って憧れつつ見詰めた記憶だ。後年、八十路となった川上さんが赤バットならぬ赤クラブを左打ちで力強く振り抜き、苫小牧でゴルフを楽しんだ機会に取材した。
千葉ロッテマリーンズの菊地吏玖投手(23)が7日、プロ入り2年目で初めて、出身地苫小牧で野球教室講師となった。「投球」の指導で「小学生の頃は体を大きく使って投げてみて」と伝えた。当地から”誕生”したドラフト1位選手のまぶし過ぎる勇姿に6年生ら後輩約60人の瞳がこの上なく輝くのが分かった。(谷)