6月に入り、支笏湖の青さが冬の重たい色から明るい澄んだ色に変わってきました。初夏ですね。
支笏湖は、秋田県・田沢湖に次ぐ国内2番目の水深を持つカルデラ湖です。
その深さですが、ガイドブックなどをみると363メートルと360・1メートルという二つの数字が出てきます。わずか3メートルほどの違いなので「大差はないだろう」と言ってしまえばそれまでなのですが、その歴史的な経緯をたどると、案外と興味深いものがあります。
支笏湖の水位は、支笏湖をダム湖として活用する1909(明治42)年の王子製紙千歳川第1発電所第1堰(えん)堤の完成で約5メートル上げられます。その当時はまだ水深の測量は行われておらず、最初の報告は11年で450メートルとなっています。次いで15(大正4)年に423メートルと訂正されます。
さらに16年に360・8メートルとされ、22年に363メートルとなりました。田中館秀三理学博士(1884~1951)らの調査で、当時は細いワイヤーの先に重りを付けて湖底まで沈めて行いました。次に測量が行われたのは68~69(昭和43~44)年で、国土地理院が超音波による音響測深を行い69年に360・1メートルと発表しました。
1996~98(平成8~10)年には、高知大学などによる湖底堆積物の採取調査が行われています。その結果、堆積物には支笏火山由来はなく、底から泥、恵庭岳火山灰、泥、樽前山火山灰(樽前b)、同(樽前a)、酸化帯の泥の6層で形成され、その分析から、4万年といわれる湖の歴史の中で2万年以前は水がなく、当初の湖は強酸性だったと考えられています。
(支笏湖ビジターセンター自然解説員 先田次雄)