変容

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  • 2020年5月30日

  小学生の頃は毎年、結核の予防接種が行われた。まずツベルクリン注射が打たれ、次は痛いBCG。化膿(かのう)した不快の痕跡が今でも腕に残る。

   赤痢の大流行もあった。「絶対に川で遊ぶな!」と先生に厳しく言われた記憶がある。井上栄さんの「感染症 広がり方と防ぎ方」(中公新書)によれば、全国で5千人以上の子どもが感染したのが小児まひ。1960年のことだ。翌年に旧ソ連の生ワクチンが輸入され、1300万人の子どもに投与されて流行は終息した。経口ワクチンの甘い味を覚えている。

   コレラも結核も、産業の発展や人口増加、都市の拡大とともに広まり、結果として上下水道の整備や居住環境の改善につながったが都市の機能の整備や生活様式の変容、薬やワクチンの効力をすり抜けてエイズや新型インフルエンザなど次の感染症が襲いかかる。

   1月9日、中国武漢市での確認が報道されて始まった新型コロナウイルス感染禍。今は世界中の約570万人が感染し、死者は約35万人に上るとか。27日現在、アメリカだけで170万人が感染し、死者は10万人を超えたという。

   約1万7千人が感染し、29日現在で890人の死者を数える日本は緊急事態宣言を解除した。感染増加の続く北九州市は第2波におののき、北海道は第3波への警戒が続く。緩和の加減だけでなく都市の巨大化や過密などを解消する根本的な変容の検討は―。(水)

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