下  医療・福祉の苦境支えた連携 不足物資の提供 必要な情報を共有

  • 医療現場の模索 クラスター発生の千歳から, 特集
  • 2020年5月29日
連携の会に寄せられたマスクなどの支援物資。有志の善意が、感染者が出た施設を支えた

  新型コロナウイルスの感染者が28日時点で、103人まで増えた千歳市。道内では札幌市に次ぐ多さだ。市内ではグループホームぬくもりの里、北星病院、千歳第一病院、訪問看護ステーションやさしい介護しののめ、高齢者複合施設グラン・セラ柏陽の5カ所でクラスター(感染者集団)が発生した。医療機関や福祉施設の運営、救急医療に支障が生じる中、専門職の連携が地域の医療と福祉を支えた。

   NPO法人ちとせの介護医療連携の会は4月、感染が判明した施設にアンケート調査を実施し、物資が不足している状況を把握。企業や医療機関、介護施設などに寄贈を呼び掛け、マスク1万枚以上をはじめ防護衣、フェースシールドなどを集め、速やかに各施設に提供した。木下浩志同会事務局長(38)は「介護、医療に関わる人を守ることが、感染拡大を防ぐことにつながる」と強調する。

   クラスターの頻発に危機感を覚えた、他の高齢者施設や医療機関の不安を和らげようと訪問支援も実施。古泉循環器内科クリニックの院長で、同会の古泉圭透会長(55)が予防策を助言した。

   例えば、看護師が毎日複数の利用者宅に足を運ぶ訪問看護ステーションに対しては、スタッフ同士の接触を避けるため、自宅からの「直行、直帰」を提案。血圧計などの器具は本体をラップや袋で包むなど具体的なアドバイスもした。古泉会長は「感染リスクが広がる中で関係者は不安。専門職や患者、利用者のメンタルヘルスを守る取り組みも不可欠」と語る。

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   同会は医療と介護の連携を図る目的で、2010年に発足。17年にNPO法人格を取得した。医師、看護師、社会福祉士、介護職員、理学療法士ら約250人が実務に関する研修会やレクリエーションの開催を通して、職種と所属を超えた支え合いの仕組みを構築してきた。

   4月20日からはホームページ(HP)に新型コロナに関する特設ページを開設。医療機関や介護施設の職員が必要とする情報を発信する。従業員や利用者の感染予防、感染者が発生した場合の対処法を掲載しているほか、防護衣の作り方なども動画で紹介している。同会の会員からの情報が生きた充実した内容。同会事務局の坂本大輔さん(37)は「クラスターがどんどん広がる中、現場で働く人の声をHPで反映しようと考えた」と話す。

   6月には新型コロナの予防策を強化しようと、専門職を講師にウェブ研修会を予定。感染者が出た施設や会員から寄せられた情報を基に、感染対策マニュアルを作成し、看護師や介護職に配る考えだ。他地域でクラスターが発生した場合、千歳の事例と情報を提供することも想定している。古泉会長は「感染予防の情報を共有し、みんなで対処するための組織づくりが大切。どこのまちでもできるはず」と強調。感染拡大の防止に資する連携の強化に意義を見いだしている。

   ※この企画は平沖崇徳が担当しました。

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