中 救急体制危機的状況に コロナの怖さ「他の診療にも影響」

  • 医療現場の模索 クラスター発生の千歳から, 特集
  • 2020年5月28日
切迫した医療態勢に際して急きょ、外科系の1次救急患者を受け入れた休日夜間急病センター

  千歳市をはじめ恵庭市、安平町など周辺地域の基幹病院である千歳市民病院で4月30日、職員2人が新型コロナウイルスに感染していることが明らかになった。山田喜一事務局長(58)は「高いレベルの感染対策を続けてきたのでショックだった」と振り返る。病院の入り口に自動の検温装置を設け、感染が疑われる患者には防護衣姿で対応するなどしてきたがその後も職員1人、患者1人の感染が相次いで判明した。

   玉井留理子看護部長(53)は「皆、不安だった。自分が感染し、患者や家族に感染させないか強い緊張感とストレスがあった」と職員らの当時の心境を代弁した。感染者と接触のあった医師や看護師ら10人は一時、出勤を停止した。

   医療系専門職の人繰りがつかなくなり、救急患者の受け入れをやめ、外来診療も休止。緊急性のない手術も延期した。玉井部長は「市民病院では、周辺地域の人たちを含め1日700人の外来受診があるが、通常の診察ができなかった」と表情を曇らせた。

   とりわけ千歳市内での救急医療に大きな影響が出た。24時間、入院などが必要な救急患者を受け入れる2次救急は、千歳医師会が同病院を含む医療機関の輪番制で対応している。

   1次救急も内科は2017年に完成した休日夜間急病センター「ささえーる」が担うが、外科は輪番制。その担当に穴が開いた。

   

   同病院での感染者判明に先立ち、同じく輪番に入っている千歳第一病院、北星病院で相次ぎクラスター(感染者集団)が発生し、救急の受け入れを休止していた。市保健福祉部の佐藤勇部長(55)は「北星病院も第一病院も対応できず、市民病院の感染者発生により、厳しい状態になった」と語る。

   市内の「外科1次」はもともと、医院の閉院などを理由に空白日が月5日程度あった。感染拡大を受けて空白日は18日増の月23日となり、市は急きょ「ささえーる」で外科1次にも対応することを決めた。

   市内の医院が同センターに医師を派遣し、空白日を月6日まで減らした。佐藤部長は「先が見えず期間も長くなる中、完全ではないが、空白日を解消できた」。2次救急は恵庭市など市外の病院の協力で乗り切り、5月14日に市民病院は救急医療機関として復帰した。

   千歳医師会理事で、古泉循環器内科クリニックの古泉圭透院長(55)は「新型コロナウイルスの怖いところは、他の診療に影響が出ることだ」と強調。「市内の三つの大きな医療機関で救急車を受け入れられず、今まで可能だった医療ができなくなった。感染で他の医療にしわ寄せがいく」と危機感をあらわにした。

   市内の介護施設で感染予防策を指導している古泉院長は「新型コロナは潜伏期間が長く、発症前の方が感染力が強い。発症時にはかなりの人にうつしている」と指摘。「どの病院もしっかり消毒していたはずだが1人、2人の陽性から感染が広がった。千歳市が特殊だったのではなく、どの地域でも起こり得た」と話した。

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