「苫小牧で一番になりたいという願いを込めてこの店名にしたんだ」。苫小牧市澄川町2の電器店「エース電器」の新谷新一社長(71)は照れながらも笑顔で教えてくれた。
1948年、桧山管内厚沢部町で4人きょうだいの3番目として生まれた。実家は米農家だが、昔から時計やテレビなどを分解して修理するのが好きだったという。69年に札幌の北海道電子工学院を卒業後、大手電機メーカーのグループ会社に就職した。
71年に友人の紹介で知り合った当時19歳の洋子さんと結婚。そして74年、当時の上司に「営業に向いているから店を出してみないか」と勧められ、26歳で独立、山手町にエース電器の第1号店を立ち上げた。テレビや冷蔵庫を扱うまちの電器店として、従業員を複数雇い経営した。
開業から3年後の77年、当時普及しつつあったオフィス用コンピューターを扱う専門店「マイコンショップエース」を併設。ワゴン車にコンピューターを数十台積み込み、市内外で使い方の出前講座を行い営業に励んだ。また、コンピューターでゲームができる専用ソフトを社員が開発し、併せて販売。「全員で新しいことに積極的にチャレンジした」と振り返る。
地域にも大きく貢献した。82年から北光小学校のPTA会長を3年間、85年からは苫小牧高等商業学校PTA会長、後援会長を計6年間務めた。「子どもたちのため、楽しいPTA役員を」ということを意識し、堅苦しい雰囲気にならないよう心掛けたという。
89年、エース電器の店舗を現在の澄川町に移転。山手町で開店してから約46年間、地域に親しまれる電器店として営業を続けている。「困ったらすぐに電話を」と伝えているためか、家電の修理だけでなく「戸棚が閉まらない」「屋根のペンキを塗ってほしい」と、あらゆる依頼が来る。それでも「人に喜ばれることが好きだから」と快く引き受け、依頼先へ向かう。
現在、力を入れているのは地域の防災。94年から苫小牧市消防団に属し、錦岡分団長を経て副団長を務めている。また、団員で構成する「とまこまい消防まとい隊」の隊長になって6年目になる。伝統の木やり唄と共に重さ12キロのまといを力強く振り、高さ6・5メートルのはしごの上で演技する隊員の勇ましさ。「消防団の力強いパフォーマンスで、少しでも多くの市民に安心・安全を感じてもらいたい」と、自ら各町内会の祭りやイベントへの出演交渉を行っている。
約60の町内会が加盟する「苫小牧市自主防災組織連合会」の設立(2016年)にも尽力した。現在は専門委員長として、各町内会の自主防災組織との連携や情報共有に努め、防災活動の格差解消を目指し模索中だ。
店舗の営業はもちろんのこと、会合への出席やまとい隊の活動など「やることはいっぱいある」とスケジュール帳の予定はびっしり。「人に喜ばれること、体を動かすことが好きだからね」と笑う。3人の子どもは独立し後継者はいないが、体が続く限り店も続けて行くつもりだ。
(小玉凜)
新谷 新一(しんや・しんいち)1948(昭和23)年2月、桧山管内厚沢部町生まれ。69年、北海道電子工学院卒業。澄川町内会の交通防災部長も務める。2015年に設立された「西彩笑店会」(ときわ・澄川商店会)の立ち上げにも携わった。苫小牧市澄川町在住。