喜多條忠さんが詞を書き、吉田拓郎さんが作曲した「風の街」という歌がある。こんな詞だ。〈懐かしすぎる友達や 人に言えない悲しみすら 風がはこんでしまう街〉。1970年代の東京・原宿。まだ中高生が押し寄せる以前の、落ち着いた雰囲気の表参道辺りが題材。あの頃の風景を思い出し、とても懐かしい。
人生で通り過ぎた街の中で、誰もが思い入れの強い街というのがあるのかもしれない。20代の駆け出し記者時代を含め通算3度、15年余り暮らした千歳市は、その街の一つだ。まだ元気だった頃の中心商店街を取材で毎日歩いたり、保守分裂の激しい選挙戦に困惑した思い出もある。気を使ってもらった先輩や友達でもう星になった人もいるが、今でも親しくさせてもらっている知人や友人が多い。
まだ子供が小さかった頃から、家族であの街で過ごした。仕事以外でもさまざまな出来事があり、思い出は尽きない。外部から来た人たちを、優しく包み込むような街―。転勤の多い基地の街という歴史の知恵なのかもしれないが、そんな印象が残る。「千歳スピリット」という言葉もある。
あの街の人たちの喜怒哀楽を伝えてきた「千歳民報」の休刊まで、あと1週間となった。何事も始まりがあれば、終わりは必ず来る。そう思って生きてきた。ただ、時代の流れとはいえ、寂しい。札幌で取材を続ける一記者として、千歳にエールを送り続けたい。(広)