四国の香川県は降り立った瞬間から、空気が違っていました。街を歩けば、どこからともなくうどんの香りが漂ってきて、北海道育ちの僕には、まるで異国のようでした。
しかし、もっと驚くことが待ち受けていました。職場の同僚と食事に出掛けると、行き先は予想通りうどん屋。朝食にうどんをすする姿は珍しくないと聞いていましたが、昼食もうどん。「さて、夕食は何にしようか」と尋ねると、返事は「うどんでいいだろ?」。目を丸くする僕に、友人は平然と言いました。「うどんは主食だからね」。そう、彼らにとってうどんは、僕たちが米を食べるようなもの。朝昼晩、毎食うどんを食べる人さえいたのです。
そして、さらに驚くことがありました。こしのある麺、温かいつゆに冷たいつゆ、揚げたての天ぷらに季節の野菜。同じうどんでも、一日中飽きることなく楽しめる多様性があったのです。
うどんへの愛情は、料理人の腕前だけでなく、食べる人々の表情にも表れているように見えました。熱々のうどんに箸を入れる瞬間の、あの幸せそうな顔。それは、まさに「うどん県」の真骨頂でした。
北海道では考えられない食文化。しかし、その根底にある「愛すべき郷土の味」という思いは、どこか懐かしく、温かいものでした。
うどんざんまいの旅は、日本の食文化の奥深さを、身をもって体験させてくれました。僕の中の「当たり前」を揺さぶり、ここに僕は、日本各地の郷土料理を食べ歩く旅への思いを強くしたのでした。
(苫小牧工業高等専門学校准教授)