私たちの暮らしに大きく関わる消費税の税率が今年10月、8%から10%に引き上げられた。直前の駆け込み需要や増税後の買い控えなど消費への影響は少なかったが、企業や小売店では初めて導入された軽減税率への対応でレジ更新や従業員教育、利用客への周知など準備に追われた。消費者も細分化された税率区分に困惑。負担軽減策として期間限定でポイント還元されるキャッシュレス決済も、シニア層を中心に十分な普及は進んでいない状況だ。
消費税が導入されたのは1989年4月。当初は3%で始まったが、97年4月に5%、2014年4月に8%と段階的に税率が引き上げられてきた。12年8月には参院本会議で税率10%に引き上げる法案が可決成立されていたが、安倍政権は経済動向などを踏まえて2度にわたって延期。その後、景気が冷え込むリスクはあるものの医療介護など社会保障のコスト増加や、教育無償化に向けた財源確保が急務として実施が決まった。
14年4月の前回増税時は住宅や車などの高額商品を購入するケースが目立ったが、今回は国の給付金制度が手当てされたことで大きな動きはなかった。一方、トイレットペーパーやティッシュペーパーなど日用品は駆け込み需要の傾向が見られた。
今回の税率引き上げでは、品目限定で税率を8%に据え置く軽減税率が新たに導入されている。対象は酒類を除く飲食料品と週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づく)。飲食料品には「外食」や食事を配膳・提供する「ケータリング」は含まれておらず、スーパーの店内飲食コーナーを利用する場合は10%が適用されるなど、複雑な制度に市民からも不満が噴出した。
有料老人ホームで提供される飲食料品も軽減税率の対象だが、適用されるのは1食当たり税込み640円以下(1日当たり同1920円以下)。最近は食材の値上がりで1食当たりのコストが上昇しており、運営事業所からは「限られた予算でやりくりをする工夫が必要」との声も上がっている。
市内のスーパーや商店などでは、複数税率に対応するレジへの更新や増税前日に商品の値札を切り替える作業に追われた。増税初日も混乱を避けるため、レジ前に案内文書を掲示したり、来店客に口答で増税を伝えたりするなどあらかじめ備えた店舗や事業所が多く、大きなトラブルは起きていない。
政府は今回の増税に合わせ、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済をすると、支払い額の最大5%がポイントで戻る「ポイント還元制度」を導入した。来年6月末までの期間限定だが、市内では飲食店を中心に取り入れる店舗が拡大中。利用者も徐々に増えてはいるが、シニア層は関心が薄く「事業の仕組みが分からずに不安」という声もある。
苫小牧消費者協会がまとめた消費税増税後の市民アンケートでは、回答全体の半数以上が外食や食費を切り詰めるなど節約志向も現れている。
最近では忘年会シーズンを迎えていることもあり、市内錦町、大町の飲食店では「入り込みは昨年とそれほど変わらない」という声が多いが、「増税の影響が見え始めるのはこれから」と年明けの動向を懸念する見方もあり、今後の動きが注視される。
(報道部 松原俊介)