(7)道の駅あびらD51ステーション開館 来場者数は順調に推移、集客対策で公園整備へ

  • この1年2019, 特集
  • 2019年12月23日
オープンから多くの観光客を呼び込んでいる道の駅「あびらD51ステーション」

  胆振東部地震からの「復興のシンボル」として今年4月、安平町追分柏が丘でオープンした「あびらD51(デゴイチ)ステーション」は、全道で124番目、胆振、日高管内では13番目の道の駅として誕生した。開業と同時に町内外から訪れた大勢の人たちでにぎわい、来場者数はオープンからわずか3カ月足らずで当初の年間目標だった32万人をクリア。11月末時点で77万7554人を数え、全国にその名をアピールした。

   開業前日の4月18日。関係者約150人が出席した記念式典で、及川秀一郎町長は「復興元年の象徴的施設となる」と震災から立ち上がる町の決意を示した。”鉄道のまち”として積み上げてきた歴史を紹介した資料館を併設するセンターハウスと、地元の新鮮な農産物を並べた直売所の2棟で構成。一つの施設にまちのすべてが詰まった待望の道の駅のオープンだった。

   ただ、すべてが順調に進んだわけではなかった。昨年9月の震災で建物内のタイルが破損し、SL車庫棟では車両整備用の床が沈下。さらにレールのゆがみが確認され、資料館に保管展示するSL「D51―320号機」と、北海道鉄道観光資源研究会がインターネット上で資金を募るクラウドファンディングを活用して購入した特急車両「キハ183系」の移設は、6月まで延期せざるを得なかった。

   困難の中で開業した道の駅だが、新千歳空港や札幌市から近いという地理的条件もあり、町外から多くの客を呼び込んだ。開業初日は観光客らが車で駆け付け、施設前の道路には駐車場待ちで2キロの渋滞ができたほか、施設内で販売している焼きたてのパンは連日完売した。今年限りだった10連休の効果もあり、4月は10日余りの営業日で来場者6万8410人を記録。5月は月間最多の13万3903人が来場した。6月中旬には実物のSL「D51―320号機」や「キハ183系」も到着。その雄姿を目に焼き付けようと、道内各地から多くの鉄道ファンが集まった。

   施設側も努力を重ねた。夏にはキハ183系の車両内部公開やミニSLの乗車体験をはじめ、お笑い芸人を招いたトークショー、音楽ライブなどを開催。さまざまなイベントを道の駅とリンクさせることで、集客に結びつけた。

   一方、10月に入ると来場者数は8万3301人、11月も4万6285人と10万人台を下回った。観光の目玉の一つであるキハ183系の車両が冬の劣化防止のためブルーシートで覆われ、観覧できなくなったことなどで入り込みが減少。2年目以降の集客は大きな課題だ。

   町は今後の対応策として、2021年春の開業を目指し、道の駅周辺に膜状のトランポリン「ふわふわドーム」など子どもが楽しめる遊具を設けた「柏が丘公園」(愛称ポッポらんど)を整備する方針を掲げる。さらに来場者アンケートを定期的に行い、調査結果を基に客層やニーズに応じたイベントを企画。販売商品も充実させるなど「観光協会と協力しながら短期的、中長期的な施策を打ち出していく」としている。

   震災で大きな被害が出た東胆振3町だが、着実に復興に向けた動きは進んでいる。安平町では、関係者が工夫を凝らしながら町のシンボルを継続的にアピールする考えだ。

  (胆振東部支局 石川鉄也)

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