夜の団らんの時間帯だった。誰もがいつものように過ごしていた時、再び大地が揺れた。2月21日午後9時22分ごろに起きた地震は厚真町で震度6弱を観測。昨年9月6日に起きた胆振東部地震の余震としては最も大きい規模となった。
気象庁によると震源は胆振地方中東部で、震源の深さは33キロ、地震の規模(マグニチュード)は5・8と推定。同庁の説明では胆振東部地震の一連の活動によるもので、安平町、むかわ町が震度5強、札幌市や平取町などは震度5弱、苫小牧市や白老町、登別市、新ひだか町など5市4町で震度4が観測された。苫小牧市で3人、厚真町と札幌市、登別市でそれぞれ1人がけがを負ったが、幸いにも死亡者はいなかった。
震源地に近い胆振東部3町(厚真町、安平町、むかわ町)と苫小牧市、白老町は地震発生直後、災害対策本部や警戒本部を立ち上げ、被害状況などを情報収集。このうち3町は直ちに避難所を開設し、町民対応を優先的に進めた。
余震の影響で厚真町では、町内のコンビニエンスストアの陳列棚からワインの瓶などが落下。豊沢地区の移住者向け分譲地ルーラルビレッジでは、水道管が破損し最大150戸が断水状態に。町がペットボトルやプラスチック製のタンクに入れた水や食料を住民に提供するなど対応に当たり、23日には完全復旧し、地域町民の生活は安心さを取り戻した。
むかわ町では田浦地区の住宅で煙突が折れた。この住宅は昨年9月の地震で家屋が損傷しており、余震が追い打ちをかけた格好となった。
苫小牧市では工場設備が自動停止するなど、一時的に生産活動に影響が出たものの、翌日中にはほぼ復旧している。昨年の地震で大きな被害を受けた港湾施設も現場巡回で翌朝までに問題がないことが確認され、関係者が胸をなで下ろした。
交通機関への影響もあった。新千歳空港では滑走路点検などで発着便が遅れ、札幌圏でJRの遅れや運休も発生。列車内に長時間閉じ込められた人たちがいたほか、空港では足止めされた外国人18人を含む計175人が不安な一夜を明かした。
札幌市内では地震発生直後から地下鉄が全線で運転を見合わせて、帰宅困難者が続出。駅前のタクシー乗り場には氷点下の寒さの中で100メートルもの順番待ちの長い行列ができ、帰宅途中の札幌市民に影響が出た。
余震後の対応では、昨年9月の地震と同じようにボランティアが活躍している。厚真町の災害ボランティアセンターでは、23日朝から集まった20人のボランティアや職員が2人一組になって住民宅を巡回。被害状況を調査し、散乱した家具や食器を片付けたり補修の作業を行ったりした。同町鹿沼地区では男性ボランティア3人が2階建て住宅を訪れて地震の揺れで床が抜けそうになっているのを確認。畳を剥がし、床板を直すなど補修を施している。
安平町でもボランティアらが住民宅を訪れ、被害状況を調査。家の片付け作業にも力を尽くすなど、復興に向けて欠かせない存在として活躍した。
近年は全国各地で地震が頻発している。いつでも対応できるよう日ごろの備えが重要だ。 (報道部 渋谷賢利)
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2019年もあと半月。今年起こった出来事を振り返る。