コンブ

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年11月22日

  シンプルを旨として、ここ2年余り、理髪店で髪を切る際の注文は「スポーツ刈り」とすることに決めている。仕上がってから、髪形を確かめようと鏡を見れば、すっかり白髪男。

   なぜそうなったのかは分からない。「黒髪維持」にはよろしい―とされる海藻、コンブはよく食べた口を持つにもかかわらず。個人的には思い入れの強い道産食材。学生時代に約1カ月間、漁手伝いのアルバイトをしたからだ。

   襟裳岬突端近くの坂の下の漁業者宅に泊まり、夏の漁期に携わった。夜明け前に起床。沖合にわれらが船首の若大将が乗る舟が漁する様子を陸で見る。コンブ満載の舟が浜に到着。総掛かりでこれを降ろして小型トラック荷台に移し、丘の上の干し場へ運送した。

   5~6メートルの長さがあるコンブを、前船首のおじさんの要領をまねて砂利上に敷き、天日に干す。慣れるまで数日かかった。しけの日は、ちぎれて海岸に流れ着くコンブを拾い、日中は等級選別。出荷までの手間暇を存分に体感した。

   そのコンブが危機にあるという。北大の研究グループは、北日本のコンブ類分布域が今後の地球温暖化の進行によって大減少することと、分布が限られている複数の種が日本の海域から消失する可能性が高いことを先月発表した。

   将来は身近でなくなるかもしれないコンブ。水産資源を守るため、白髪が増えても知恵を絞り、対処を考えなければなるまい。(谷)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。