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  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年11月21日

  安倍晋三首相の在職日数が20日で通算2887日となり、桂太郎を抜いて歴代最長となった。長期政権のおごりを指摘する声も出ているが、長さではなく根源的な問題があると思う。

   安倍首相のやじは今に始まった話ではない。例えば2015年5月の衆院特別委員会。当時の民主党議員に「早く質問しろよ」とやじを飛ばした。憲法は第4章国会で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定めている。どれほど立場や意見に違いがあっても、議員は選挙で票を託された国民の代表である。誠実に答弁すべき政府の代表が質問者をやじるのは、国民に暴言を吐くのと同じことだ。やじの中身や品位以前の問題である。

   一方で、有権者に「政治家を自らの代表だと思っているか」と尋ねたところ、「思わない」が45%で、「思う」の41・5%を上回った。非営利のシンクタンク「言論NPO」が18歳以上の男女千人を対象に行った日本の政治・民主主義に関する世論調査の結果だ。政治家を「信頼している」と答えた人は20・1%にすぎない。

   選挙の投票率は低下傾向に歯止めがかからない。だが議員が自らの代表である以上、きちんと投票に行き、信頼できる政治家を送り込まなければならない。首相が議員にやじを浴びせる振る舞いは、議員の後ろにたくさんの国民がいるという当たり前の事実を自覚させることでしかなくせない。(吉)

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