依存症

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年11月2日

  自分の行動は自分の意志で制御できる―と思いたい。しかし現実はそうでもない。甘い物やお酒につい手が伸び、体重や肝機能の数値に悩む人は多い。

   深刻さや悲惨は比べようがないが、賭け事もそうだろう。家族にうそを言い、消費者金融の世話になりながらマージャンや競馬、パチンコをやめられず家庭や家族関係を破壊した人の例は多い。身近に、そういう困った親類や知人を持たない人の方が少ないとか。

   新潮選書「ギャンブル依存とたたかう」には、精神科医が見た、ギャンブルにとらわれた人たちの現実が記録されていて考えさせられる。アメリカで考案された依存症判定の検査が紹介されていた。問いは「ギャンブルの証拠となる券などを家族に隠したことがありますか」「ギャンブルに使うお金に関して、家族と口論になったことがありますか」など12問。「はい」という答えが五つ以上で病的賭博者の判定になるそうだ。賭け事はしないが、試しに受検してみた。ギャンブル依存症の暗い闇を少し、のぞいた気持ちがした。

   苫小牧市ではカジノを含む統合型リゾート施設(IR)関連の行政などの動きが活発だ。市議会は誘致決議を賛成多数で可決した。反対の声も多く住民投票を求める準備が報道されている。議会の決議では「地域住民がギャンブル依存症で苦しむ者がいないよう具体的な対策を示すべき」と市に求めている。しっかり考えたい。(水)

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