IOCは東京五輪でマラソンと競歩を猛暑下で開催することを懸念。大会期間中、札幌の気温が東京より5~6度低いことから、選手の健康に配慮する形で札幌での開催案が浮上した。札幌開催が有力になったことに、市内関係者の受け止めはさまざまだ。
千歳商工会議所の奥山拓己専務理事は「千歳は札幌に近く、空港、宿泊施設、タクシー、飲食店など、さまざまな経済効果を見込める。大歓迎だ」と実現に期待を寄せる。千歳陸上競技協会の古川昌俊会長も「うれしいこと。千歳で合宿した後、大会に臨む国もあるのでは」と歓迎するが、交通規制や警備、宿泊施設の受け入れ態勢の問題などを挙げ、「(札幌の関係者は)1年未満で準備しないといけない。その意味では複雑な思い」と語る。
「多くの訪日外国人旅行者(インバウンド)に北海道を知ってもらえるまたとないチャンス」と喜ぶのは千歳市商店街振興組合連合会の齋藤元彦理事長。開催を歓迎するが「宿泊施設は札幌も千歳も限られた器しかない。本当に対応できるのか。これまで東京が準備してきただけに困惑もある」と東京への配慮と戸惑いもにじむ。「(開催が正式に)決定すればあらゆる業種が協力して、早急な態勢づくりが必要。夏のイベントの見直しも考えなくては」との構えだ。
千歳はマラソン、長距離、競歩種目の日本陸上競技連盟ナショナルチーム直前合宿地に選ばれている。夏から秋にかけて日本陸連マラソン代表内定選手の強化合宿が行われたほか、競歩の五輪代表に選ばれた鈴木雄介、山西利和両選手も暑熱対策を視野に入れた合宿を実施。千歳市観光スポーツ部の小田賢一部長は「もし札幌で実施されることになれば、事前合宿の受け入れ環境を整備をしていく。万全の体制を整えたい」として、今後の動向を注視する構えだ。
2020年東京五輪の陸上競技のうち、男女のマラソンと競歩の競技会場を東京都内から札幌市に移転することが濃厚になり、千歳市内では関係者が歓迎の声が上がる一方、受け入れ態勢を懸念する見方や陸上競技団体との関係から静観する姿勢も見られた。市内で日本以外の国の事前合宿が行われたり、五輪期間中の観覧客の宿泊需要が高まったりする可能性もあるだけに、関係者は国際オリンピック委員会(IOC)をはじめ札幌市などの動向を注視している。