非行に走った少年少女に兄や姉のような存在として寄り添い、一緒に悩んだり学び合ったりする苫小牧の奉仕団体「苫小牧BBS会」で会長を務める笹田正治さん(66)。同会設立から半世紀以上が過ぎ、会員の減少という課題に直面しているが、児童虐待や不登校など子どもを取り巻く問題が複雑化する社会のニーズに応えるため、新たな活動を模索している。
芦別市の出身。地元の高校を卒業後、苫小牧市内の企業に就職した。
社会人2年目、20歳の時に苫小牧市の開基100年の記念事業として若者を八王子市や千葉県市原市に派遣する「第1回苫小牧青年の船」に参加した。さまざまな職業の団員30人が5泊6日、寝食を共にしながら研修を重ねる中、「多様な意見や価値観に触れることで得られる喜びや楽しさを初めて知った」という。
この感動に突き動かされるように、苫小牧に戻ってすぐに他の団員と一緒に自主サークル「百年会」を設立。さらに、当時の苫小牧BBS会の会長から誘いを受け同会にも入会。新たな出会いと学びの日々をスタートさせた。
「百年会」は市勤労青少年ホーム(2014年3月閉館)を拠点に活動。親睦を深めながらまちの在り方を考える自主研修に取り組み、自動車の排気ガスや騒音が健康に与える影響を探る独自調査にも乗り出した。
一方、BBS会では1970代後半から80年代にかけ、全国各地で大きな問題となっていた中学生の非行や校内暴力に対応するため、非行の未然防止策を考える研修に注力。保護観察所や児童相談所などの依頼を受け、非行に走った子どもと会員が友達のように接しながら自立を支援する「ともだち活動」にも積極的に取り組んだ。
ともだち活動では、親との関係に悩んで荒れた生活を送っていた子どもや、きょうだいと比較されて心に深い傷を負った子どもとも出会った。「最初は心を閉ざしていた子どもも徐々に心を開いて自分の人生を取り戻していく姿を見せてもらい、自分もとても成長させてもらった」と振り返る。
80年には道の主催事業「第4回道民の船」に胆振分団員の一員として参加。22日間にわたって船で上海、香港、マニラ、沖縄などを巡り、現地の施設や史跡などを見学しながら他の団員と交流を図って視野をさらに広げた。
苫小牧BBS会に入会して約46年。子どもたちを取り巻く問題は大きく変化。最近は、インターネット上のいじめやトラブル、児童虐待など表からは見えにくい問題が増えている。このため、木製ブロックで自由に遊ぶ機会を地域の子どもたちに提供し、心を豊かに育むという新たな活動にも着手している。
現在の会員は5人。ピーク時の6分の1まで減少しているのが悩みだ。しかし、活動への情熱は尽きない。「先輩たちがつくった苫小牧BBS会のともしびを次の世代につなぐことが私の使命。それが、自分の今までの活動を支えてくれた人たちへの恩に報いることだと思う」と力を込めた。
(姉歯百合子)
笹田 正治(ささだ・まさはる) 1953年2月23日、芦別市出身。芦別工業高校卒業後、71年4月、日本軽金属苫小牧製造所に入社。2010年11月に退職し、現在はネクスコ・サポート北海道に勤務。苫小牧市青葉町在住。