”諦めない気持ち”が大切ーロンドンパラ水泳・伊藤真波さん中央高校で講演

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  • 2019年9月27日
バイオリンを演奏するための義手を説明する伊藤さん

  オリンピック・パラリンピック教育実践校の苫小牧中央高校(山口祐正校長)は26日、オリパラ教育講演会「あきらめない心」を同校で開いた。ロンドンパラリンピックなどで水泳競技の日本代表として出場した伊藤真波さんは「誰もがやったことのないことに挑戦した。目標を達成するには諦めない気持ちが大切」と力強く語った。

   講師を務めた伊藤さんは高校で准看護師の資格を取得。卒業後は看護師を目指し、専門学校に通いながら医療現場で経験を積んだ。人生の転機は成人式を目前に控えた04年11月。バイクで実習先の病院へ向かう途中、トラックと衝突し右腕を失った。一度は絶望の淵に立ったが、伊藤さんは採血など医療行為ができる義手を製作し、リハビリを続けて復学して07年に看護師として就職を果たした。

   さらに5歳で始めていた水泳もリハビリを兼ねて再開。08年の北京大会、12年のロンドン大会で念願のパラリンピックに出場。10年のアジア大会では100メートル平泳ぎで準優勝に輝いた。15年には看護師を退職し、現在は2児の母として子育てに奮闘中。講演活動も行っている。

   講演で伊藤さんは挑戦することの難しさと貴さを力説した。利き手の右腕を切断したことは「なかなか受け入れられなかった」と当時の苦悩を明かす一方、初めて車椅子バスケットボールを観戦した時に衝撃を受けたエピソードを紹介。「倒れても自力で起き上がる姿に感動した。自分も強い人間になりたいと思うようになった」と振り返った。

   伊藤さんは、障害のある中での数々の挑戦について「諦めたくない強い気持ちと周囲の支えがあったからやってこられた」と語った。小学生の時から習ったバイオリンの腕前も披露し、特注で作った義手を装着して映画「千と千尋の神隠し」の挿入曲を奏でると、会場は大きな拍手に包まれた。

   同高校の斉藤摩那香さん(3年)は「自分も歯科衛生士になりたい目標がある。伊藤さんの姿勢を見習って必ずかなえたい」と話した。

   講演後、本紙の取材に「2020年のパラ東京大会が決まってから、障害者スポーツの大会規模の拡大や選手の受け入れ体制整備など急速な変化を感じた」と伊藤さん。一方で「まだまだ資金面などで苦労する状況。21年以降も注目されるための取り組みが必要」と指摘した。障害者スポーツの魅力について「大舞台に立つまでの努力はすさまじい。そうした過程を報道などで知って競技を観戦すると一段と面白くなる。来年の大会が盛り上がれば選手の励みになる」と期待を込めた。

   同校は2017年に実践校に認証され、18年1月にパラアイスホッケー元日本代表の永瀬充さんが講演している。

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