(5)広報司令部(東千歳)藤松壽一1尉(52) 隊員たちの活動記録し発信 被災者目線第一に

  • 災害派遣の記録, 特集
  • 2019年9月14日
厚真町役場で「記者レク」を行う広報担当(第7師団提供)
厚真町役場で「記者レク」を行う広報担当(第7師団提供)

  地域との懸け橋と称される自衛隊の広報・渉外担当。活動の記録、自治体との連絡、報道への対応など、任務は幅広い。第7師団も日頃から積極的な情報発信で、自衛隊への理解や信頼を高めている。昨年9月6日の胆振東部地震後も、現場主義と被災者目線で広報活動を繰り広げた。

   司令部総務課の広報・渉外班は、災害派遣の初動部隊と同時に動いた。目的は活動の記録。藤松壽一1尉は部下と2人1組、小型車両に乗り込み、第7特科連隊の小隊に続いた。現地がどのような状況か、詳細がまだ判別していなかった発災当日、明け方には厚真町に到着した。

   同行した小隊がすぐさま倒壊した家屋の捜索に入る中、付近の土砂崩れが発生した山では亀裂が見えた。任務は違えど、階級は最上級者。「人命救助が最優先」と臨機応変、率先して警戒に当たった。遺体が発見されるまで2時間ほど、山に危険な兆候がないか監視し続けた。

   発災の翌朝まで不眠で隊員の活動を記録した。7師団の指揮下部隊が厚真町の各地区に分かれ、24時間態勢で人命救助に当たる中、車と徒歩で場所を移動しながら、夜通し写真や動画を撮影し続けた。7日未明に厚真町役場に到着するやいなや、すぐさま報道対応の任務に当たった。

   新聞やテレビなど報道各社から、問い合わせや取材の要望などが相次いでいた。司令部機能を厚真町役場に移し、報道対応も積極的に行うことになった。7日から人命救助や民生支援の報道公開を始め、支援活動の概要などを記者に説明する「記者レク」の毎朝開催を慣例化した。

   「師団広報が町役場にいることで対応ができた。(報道各社が)役場に『取材させて』と言ってもそれはできない状況だった。町と連携しながら取り組む必要があった」と振り返る。支援活動の内容を事前に調べ、時間や場所をセッティングし、安全に配慮しながら取材に対応した。

   給食や給水、入浴などの民生支援も随時、報道公開したが、「被災者の負担にならないこと」を第一に考えた。日頃の訓練などの報道公開であれば、駐屯地や演習場の中で自衛隊だけで完結するが、被災地では「相手がいること」を念頭に置いて、報道各社に配慮を求め続けた。

   「広報は自衛隊の窓口」を肝に銘じ、自治体との連絡や記者への対応はもちろん、被災者との会話などもできる限り、笑顔で接するように心掛けた。「自衛隊は堅いイメージを持たれがち」と感じるだけに「相手が少しでも話しやすいように」と穏やかな笑みで場を和ませた。

   災害派遣の広報に「『自衛隊がこんなことをしている』というPRではない」と強調しつつ「支援活動を広く知ってもらうことが、まちの復興につながるのであれば」。町役場での記者レクは23日まで、ファクスの情報発信は10月14日まで毎日続いた。復興への願いを込めて。

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