後悔

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  • 2019年9月4日

  3%の税率で消費税の徴収が始まったのは1989年4月。「売上税」の名前で議論が始まった頃の、中曽根康弘首相が舌を出しあっかんべェをしたイラストのポスターを覚えている。

  消費税スタートの当時、長男は小学校中学年。次男が小学校入学を控えていた。以来30年。税率は子どもたちの食欲増進と胃袋の成長に合わせ、5%に上がっていった。そして10月1日には、体のあちこちに不具合が現れ医療費の負担に悩む高齢夫婦の不安をあおるように10%に引き上げられる。

  増税まで1カ月を切り消費税をめぐる報道が多い。「3~10%税率5通り」と、新聞の見出し。軽減税率があり、電子マネー決済時のポイント還元、店内飲食か持ち帰りかによっても税率が変わるため、こんな税率になったようだ。銀行の手数料や高速道路の値上げの発表はつい先日のことだし、牛丼チェーンやファミリーレストランの価格設定は、まだ確定していないようだ。レジスターの入れ替えは滞り、売る側、買う側とも疑問ばかりがどんどん増えていく。「大丈夫?」も新聞の見出し。

  厚生労働省が先日発表した年金の財政検証では年金の先細りが現実になった。安倍政権は年金や介護、医療の負担増を検討する会議を設置すると報道されている。

  暮らしの安心や安定に結び付くのなら―という判断は誤りだったのだろうか。あっかんべェのポスターを、改めて思い出す。(水)

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