白老町大町の喫茶店「休養林」は、歌声喫茶を2011年から15年近く定期的に催している。歌声喫茶は昭和40~50年代に流行し、客が合唱を通じて交流する店。歌で顔なじみになった人々はコロナ禍後も集って歌い続け、同店は近況報告や憩いの場として地域に根付いている。
同店では、青春時代に歌声喫茶に通った店主の相吉正亮さん(85)、京子さん(84)夫妻が「白老で復活させよう」と11年3月に歌声喫茶を始めた。当初の開催日は毎週金曜日、間もなく働く人も参加しやすいようにと隔週土曜日にした。
参加者は毎回20人以上で、70~80代の女性を中心に町内や近郊から集まってくる。歌い始めは、春を待つわくわく感に満ちた合唱曲「たんぽぽ」。その後は、参加者が子どもの頃に歌った童謡や青春時代に流行した歌謡曲を1人1曲選び、ギター伴奏に合わせてみんなで歌う。最後は「今日の日はさようなら」で締めくくる。
これまで開催を取りやめたのは、猛暑やお盆を考慮した昨年8月10日ぐらいで、コロナ禍中も感染対策を講じ、活動を続けた。参加者が店主と常連の2人になることもあったが、京子さんは「当時は互いの安否確認や心身の健康づくりの場にとの思いがあった」と振り返る。
ギター伴奏は、会社員の晴山晃弘さん(52)=室蘭市八丁平=が2015年3月からボランティアで担当し、「仕事で店を訪れた時、店内に飾ってあったギターを見て京子さんに声を掛け、親しくなったんです」と話す。「皆さんと関われる感謝の気持ちを形にして伝えたくて」と、店の創業40周年を知った20年には、自作のギターピック150枚を2人にプレゼントした。昨年の創業45周年には、記念として相吉夫妻の若い頃の写真をラッピングした缶入りドロップ約40個を贈って喜ばせた。歌声喫茶が333回目を迎える15日には、京子さんとギター演奏を披露し、参加者とぞろ目回を祝う考えだ。
正亮さんは晴山さんについて「すがすがしい人。室蘭から無償で通ってくれ、感謝している」と目を細める。常連の佐々木礼子さん(81)=町緑丘=は「気心が知れた仲間と顔を合わせるだけで幸せ」と顔をほころばせ、活動が続くことを願っている。
歌声喫茶の参加費は600円(ワンドリンク付き)。飛び入り歓迎という。