標高が高いところでは紅葉が進み、雪が観測されるようになる季節。平地でも木々の葉が少しずつ黄色やだいだい色に姿を変えていっています。胆振・日高地域の紅葉の見頃は10月中旬ごろからでしょうか。9月下旬に秋の走りを感じたく、樽前山の裾野を散策したときの話です。
久しぶりの森歩きで、まず感じたのは音の違い。風に揺れる葉の音が「サー」から「サラサラ」に。微々たる変化かもしれませんが、少しずつ水分を感じなくなってきたなと。しかし、音で野鳥の居場所を探していく者として、このわずかな変化にフィットさせていかなければならないのです。
そんな変化を感じながら歩いていると「ニーニー」とヤマガラや「ギー」とコゲラに囲まれたり。決して珍しい種ではないですが、行動を観察していると偶然居合わせた2種ではなく、複数の種が一緒に行動する混群(こんぐん)を結成しているようでした。
さらに足を進めると、どこか遠くから「キョーン」とクマゲラの鳴き声が。姿は見つけられずとも豊かな森であることを知らせてもらえます。そんな気配に触れられるだけでも楽しいものなのです。そこからしばらく生き物の気配はなく、ヒグマのふんを見つけたのでそこでUターン。何かの木の実を食べているようでした。
そんな帰り道に出合ったのはシマエナガ。どんな季節でも人気の野鳥。触れるくらいの距離で出合えたときの幸せさを幾度と体験しているので、「少しでも大きくかわいく観察したい」という方の気持ちは痛いほどにわかります。
でもこのシチュエーションのとき、私は離れた場所からシマエナガに出合えたことが幸せでした。「近いと見落としてしまうもの。遠くだからこそ見ることができるもの」。もちろんその逆のことも言えるので、必ずしも同じ選択が正解とは限りませんが、周囲の状況把握をまず最初にすることで、その時の最適解と出合いやすくなるのでしょうね。
まずは冷静な判断を。
(日本野鳥の会苫小牧支部・小林誠副支部長)