新鮮なキュウリやトマト、ダイコンが卓上に並ぶ季節がやってきた。色や形が多少不ぞろいでも鮮度や味の違う、ご近所産。スーパー店頭で高値の悪口を言われ続け皮の硬くなった野菜とは別物。
先日の新聞に、ピカピカと赤黒く熟したクワの実の写真が載っていた。子どもの頃の遊び場だった里山の、これから始まる実りの季節を懐かしく思い出した。ハギに覆われたなだらかな小山に、クワの木が数本あった。実が熟したかどうかは、出入りする者の指や口角を見れば分かった。赤い色が少し洗っただけでは落ちないのだ。顔のあちこちに季節の色を残したまま遊ぶ者もいた。実は甘かったものの、たまに対面する大柄なカイコの幼虫の不気味な顔や形は苦手だった。
コクワも忘れてはならない。そろそろ実り具合を確かめておかなければ。種類が違うのか俵型の実は、長さ3センチほどのものと、2センチ角ほどのものがあった。緑色の実が黒みを帯びて、軟らかくなればもう食べてよろしい―の合図だった。
マタタビの木の場所も一本、覚えている。今頃は緑色の実がまだ硬い。盆が過ぎて、実の色が黄色く変わり、軟らかくなれば食べ頃だ。初冬の頃まで、独特の味や香りを楽しめたものだ。あの木は、まだあの場所にあるのだろうか。(水)