山名

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2024年6月26日
山名

  日高山脈の麓、静内町(当時)の支局に勤務当時の一日は、トイレの窓から1839峰や、後ろの主稜線(りょうせん)の天気を確かめて始まった。取材に出掛ければ、車のどこかの窓から四季の山々や稜線が見えて、飽かず眺めていた。

   山脈の特徴として印象に残っているのは山の名前。北の大地の先人は集落から見える高い山すべてに名前を付けた訳ではない。ポロシリ(大きな・独立峰)やカムイ(神)など、信仰や狩猟、生活などと大きく関わる山を中心に命名したという。エサオマントッタベツ、カムイエクウチカウシ、ヤオロマップ、イドンナップ―。難解な長い名前は、その山域の自然に憧れて訪れた北大山の会などの学生たちが道案内を依頼した先人から、山の特徴や生きる動植物の名を聞いてつないだアイヌ語といわれる。山名そのものが、先人の文化や歴史に敬意を表したものなのだ。日高富士や日高槍ヶ岳のような安直な「寸借山名」も、見えない。

   日高山脈襟裳十勝国立公園がきのう、道内では釧路湿原以来7カ所目の国立公園に指定された。胆振地区や石狩南部には1949年指定の支笏洞爺国立公園がある。観光振興に偏りがちな公園管理が問題とされる例も多い。日高山脈を守る地元の責務はさらに大きくなった。(水)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。