飼い犬が家族を順位付けしているというのは迷信らしいが、人によって態度は変える。ペットが増え過ぎて管理できなくなる多頭飼育崩壊と呼ばれる状況から生後間もなく保護され、わが家にやって来た雌犬(来月で3歳)が最も懐いているのが妻なのは当初から変わらないが次は微妙。よく遊んでやり、深夜も用を足しに起きたら尻を拭き、ペットシート交換も欠かしていないというのに近所の父母はまだしも、たまに会う妻の友人らにすら負けている気がする。彼女らを見つけて3倍ぐらい多く尻尾を振るのは、きっと女子が好きなのだろうと居直る。
心を通わせるのに必要なものは、笑顔と強引さとある程度の自然体。昨年亡くなった動物研究家ムツゴロウさんの名言だ。何やかやで帰宅すると駆け寄り、鼻の穴までなめてくる愛犬。距離を縮めるにはなめ返した方が良いのかもしれないが「あれ? さっき自分の肛門なめていなかったっけ」とちゅうちょしてしまうようではムツゴロウさんにはなれない。終生飼養などを促す改正動物愛護管理法施行から今月で2年。ペットを取り巻く環境は改善されているのか。愛犬は今、皆にかわいがられ幸せそうだが、ふと多頭飼育崩壊の現場からやって来たことを思い出すと胸が苦しくなる。 (輝)