納棺師という職種をご存じですか? 自宅や斎場に伺い、亡くなった方の体を拭き清め、着付けや化粧をする「湯灌」と、ひつぎに納める「納棺」を行うのが仕事です。湯灌では専用の浴槽を持ち込み、入浴させる業者もいます。
私は、2012年に湯灌専門会社へ入社し、9年間勤めて退社し、フリー納棺師となりました。ご家族から直接、ご依頼がある時に伺うスタイルです。
22年、父が悪性リンパ腫で旅立った時、父の湯灌はできず、後輩に頼みました。遺族としてこの仕事と向き合うと、悲しみと、後輩の成長を喜ぶ気持ちと、経験上、亡くなり方などによって湯灌を行えない場合もあると知っているので、ありがたいなぁという、遺族にはなり切れない複雑な思いが混在していたのを覚えています。
ちなみによく「どうして納棺師になったのか?」と聞かれるのですが、それは「人の笑顔が好きだから」です。もともと飲食店などでサービスを担当していました。調理師やお客さまとともに大切な時間をつくれることが楽しく、やりがいを感じて7年間続けました。
そして、違う形で人の笑顔を見られる仕事はないだろうか?と立ち止まった時、叔父の葬儀の際「湯灌してもらい、きれいになってうれしい」と話した母の顔が浮かびました。悲しい中でも人を笑顔にできるって、すごい…と思ったところから、納棺師としての道が始まりました。
ゆのみでは、死生観、母の介護体験に関することなど、ありのままに書きつづってまいります。1年間、よろしくお願いします。
(納棺師・苫小牧)