パキパキ、ガサガサ―。林の中やササやぶで、枯れ落ちた枝や落ち葉を踏むと大きな音が遠くまで響く。20年ほど前の怖い体験を、反省とともに思い出す。
早朝に樽前山(1041メートル)の5合目から観光道線を歩き、ヒュッテの上まで往復した時のことだ。帰路、車まであと数百メートルの所で、自分の足音より1~半歩ほど遅れて、林の中から何かの足音が聞こえるのに気付いた。歩き始める時、向こうの音は最初の1歩分が聞こえない。立ち止まる時にはパキッと1歩分多くなる。林の中は薄暗くて何も見えない。
今ほどヒグマの出没情報が多くなかった頃だ。ヒグマには逃げるものを追う習性があるから、逃げてはダメ。しかもヒグマは人より足が速い。雑多な知識を思い出しておびえながら車まで歩いた。
道は先日のヒグマ保護管理検討会で、来年度から全道で雌のヒグマを年520頭、捕獲する方針を打ち出した。走る車に頭突きや体当たりをするクマがテレビに映る。人身事故や農業被害が増えていることも踏まえ、まず繁殖を抑制し、雌の数が減少に向かう捕獲数を目指す。捕獲は来年から。雌雄の見分けなど課題もある。「問題個体」側にも人の無謀や油断などに言い分があるはず。撃たれる彼らの言い分もしっかりと考えたい。(水)