旧優生保護法に基づき、障害などを理由に不妊手術を強制されたとして、全国の男女が国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審弁論が29日、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)で開かれる。国策による差別と人権侵害について、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用が認められるかが焦点。最高裁は今夏にも統一判断を示す見通しだ。
5件の訴訟は札幌、仙台、東京、大阪、神戸の各地裁に起こされた。提訴時の原告は60~90代の男女12人で、うち神戸訴訟の2人はその後亡くなった。29日午前は東京・大阪の原告や代理人らによる意見陳述が行われる。
これまでの訴訟で、原告らは国策による不妊手術と知らされなかったり、社会的な差別や偏見が残ったりしている状況下で被害を訴えられなかったと主張。国側は、除斥期間の適用を求めていた。
5件の二審はいずれも旧法の規定を「違憲」と判断。除斥期間の適用は、札幌、東京、大阪の3高裁4件で「著しく正義・公平の理念に反する」などとして認めず、国に賠償を命じた。一方、仙台高裁で争われた1件については除斥期間を適用し、原告敗訴を言い渡した。
衆参両院の報告書によると、旧法下では約2万5000人が不妊手術を強いられ、「本人同意なし」の手術は全体の約66%を占めた。手術を受けた最年少は当時9歳だった。